第6話 人質
多対一の喧嘩が始まった。
唯我は焦ることなく、襲いくる新人類たちの攻撃を紙一重で躱していく。
「ちっ、ちょこまかうぜぇ!」
唯我は一人の拳をギリギリで交わすと顔面を掴んでそのまま窓ガラスに叩きつけた。窓ガラスが甲高い音を立てて砕ける。唯我がそのまま掴んでいた生徒を窓の外へ投げ捨てると、下から鈍い音が響いた。
「窓は……てめぇらが弁償しろよ」
全く動じていない唯我に男たちの方が逆に動揺してしまう。
「くっくっくっ、お前らァ……なにビビってんだよ。相手は一人だぜ?」
「
奥から気味の悪い笑みを浮かべた緑髪の男が現れた。蛇雅と呼ばれる男は人間とは思えないほど長い舌でサバイバルナイフを舐め回している。
「隙作れ〜。一撃で決めてやるからよ。しくじったら殺すからなぁ……」
蛇雅の掛け声で闇雲に殴りかかっているだけだった男たちが陣形を取る。左右から一人ずつ正面から一人が同時に襲ってくる。
唯我は左右の二人の攻撃を避けて殴り飛ばすと、正面から来た男の襟元を掴み、頭突きで沈めた。
「はい上出来〜」
瞬間、倒れた敵の影から蛇雅がナイフを突き出してきた。無駄のない動きで完璧に虚をつく。避けようはないはずだった。
「は?」
唯我の腹に突き立てたはずのナイフはなぜかぐにゃぐにゃに変形してしまった。
「俺の腹筋の方が硬ぇみたいだな」
唯我がニヤリと笑うと、蛇雅の顔に初めて焦りが浮かぶ。
「ありえねぇ……ナイフで傷一つつかねぇ強度だと……! こいつまさか、本当に秩序の――」
そこで唯我が蛇雅の長い舌を鷲掴みにする。
「オラッ!」
そのまま蛇雅を振り回すと、床に思い切り叩きつけた。
「がッ……!」
唯我は手を緩めず、仰向けになっている蛇雅の腹に思い切り拳叩き込んだ。
「まだやんのか。お前ら」
蛇雅がやられたのを見て、新人類たちの動きが止まる。どうやら蛇雅は連中のリーダー格だったらしい。
「やらねぇんなら帰るぞ。次こんなことしてきたら、今回くらいじゃ済まさねぇ」
唯我が連中に背を向けて帰ろうとすると、誰かが唯我を呼び止めた。
「待て唯我ァ!」
振り返ると、連中の奥で女子生徒が一人捕まっていた。
それは紛れもなく、先に帰ったはずの本田真琴だった。
「こいつがどうなってもいいのか!」
真琴を捕まえていたのは、唯我と同じクラスの高田哲夫だった。隣にはいつもの取り巻きたちもいる。
「真琴!」
人質を取られたことで唯我は動きを止める。
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