第3話 闇の中で
その頃、薄暗い空き教室に高田はいた。高田の他にも、高田の取り巻きや何人かの生徒がいる。
「高田なぁ、お前ほんと面白ェこと言うよな」
四つん這いになっている高田の上で一人の男子生徒が脚をぶらつかせて座っている。
「もう一回言ってみろよ」
高田は普段の威圧的な態度とは違い、おずおずと言った。
「あ、あいつが“秩序の守護人”なんて、そんな大層なモンだとは思えないっす……ただの調子に乗ってるバカにしか……」
男は話している高田の腹を踵で蹴る。高田が苦しそうな呻き声を上げる。
「じゃあ、お前。そのユイガってのを潰せよ。お前程度でなんとかなるんなら、そいつは“秩序の守護人”じゃねぇ」
男は高田から降りると高田の右手首を勢いよく掴み上げた。
「でも無理だよなぁ、お前ごときじゃ」
高田は先程よりさらに顔を歪ませ、苦痛の声を上げた。高田の手首には包帯が何重にも巻いてあった。その輪郭は高田の体からは想像できないほど細かった。
「あーあ、ぐちゃぐちゃじゃん。酷いねぇ」
男は高田の手首を離すと立ち上がり、高田の顎を蹴り上げた。高田より二回りも小さいはずの男の蹴りは巨体を教室の壁まで吹き飛ばした。
「高田さん!」
取り巻きが耐えきれない様子で高田に近づこうとするが、別の生徒が二人を押さえつける。
「ユイガにやられたんだろ。その程度の怪我が治ってねぇってことはユイガがお前より格上ってことだろ」
悔しそうな表情を浮かべる高田はゆっくりとした動きで土下座の姿勢を取る。
「俺にやらせてください。絶対にあの野郎を叩きのめして、
その時、
息をすることさえ困難になるほどの強烈なオーラが教室を包む。それを発しているのは間違いなく帝だった。
大袈裟ではなく本気で死を覚悟した高田だったが、オーラはすぐに消え嘘のように教室が静かになる。
「高田、気をつけろよ。今日初めて会ったやつにそこまでできるやつだ。下手こくと、俺が手を下すまでもなく、そいつに潰されるぞ」
爽やかな笑顔を見せると、帝はそのまま教室を出ていった。少ししてから、他の生徒も教室から姿を消した。
残された高田と取り巻き二人は教室の端で座り込んでいた。
「大丈夫ですか、高田さん!」
心配する二人に軽く返事をすると、高田は拳を握り締めて呟いた。
「今日の放課後、
高田の手首が一気に本来の太さを取り戻す。川島高校の闇が唯我に迫ろうとしていた。
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