タイゴンVS雷牙
「見つけたぞおっ!
戦友たちの仇ぃっ!」
三機いるタイゴンたちの内、機兵用三八式突撃銃を装備した機体に狙いを定め、跳躍する。
跳躍しながらも、空中で自身も手にする三八式の引き金を引いた。
――ヴウウウウウウウウウウンッ!
――ヴウウウウウウウウウウンッ!
フルオートで放たれた砲音は、二つ。
放たれた砲弾は、互いに有効打を与えることがなく……。
そのまま、撃ち合いの様相をみせることになった。
ただ、ライフルを撃ち合うだけではない。
走り、跳ね、伏せ、滑り、隠れ……。
互いの運動性能を極限まで引き出しての、それだ。
廃墟と化したロベの街並みは、このような戦いをするのには絶好の遮蔽と起伏を
それを巧みに利用しながら動き回り、砲火を交わす様は、さながらストリートパフォーマンスのようであった。
「隊長! 突出し過ぎでは!?」
「ちょっと、ちょっと、中尉殿!
残りの二機はどうしろってのさ!?」
無線を通じ、キリー少尉とケーナ少尉がそう呼びかけてくる。
「そっちの二機は、お前たちと他の隊に任せる!」
そんな部下たちに……ひいては、他のトミーガンたちへ向け、無線でそう怒鳴った。
「中距離から中継ぎをするこの機体が、敵小隊にとって連携の要だ!
こいつを押さえれば、後に残るのはそれぞれ極端なレンジの機体たち……。
数の利を活かせば、トミーガンでも押さえつけることは可能だ!」
カルナが言った通り……。
一騎打ちの形で中距離仕様の機体を釘付けにされたタイゴンたちは、連携を欠きつつある。
まず、最初に好き勝手ができなくなったのは、ビーム兵器を装備した機体だ。
火力において、敵が装備した荷電粒子銃に勝る手段など、存在するはずもない。
ただし、単純な射程距離という意味でなら、抗する手段は存在した。
かの山猫も愛用していた、機兵用九七式狙撃銃である。
――ガアンッ!
――ガアンッ! ガアンッ!
武器を狙撃銃に持ち替えた味方のトミーガンたちが、次々とそれを撃ち放つ。
こうなっては、さすがのタイゴンといえどたまらない。
遮蔽を利用し、ポイントを変え、どうにかこちら側の砲火を逃れざるを得なかった。
そうなれば、当然ながらビームを撃つ暇もなくなる。
その煽りを受けたのが、大胆にも近接用のカタナのみを装備した機体だ。
当然ながら、その機体が弱点としているのは、火砲を持たぬことであり……。
ライフルとビームによる援護を失ってしまえば、身一つで弾幕を相手にせねばならなくなる。
どうやら、被弾こそしていないものの、その運動性能を活かし逃げ隠れするのに必死なようであった。
――快感。
カルナの脳に沸き起こっていたのは、絶頂にも似た快感である。
かつて、文字通り手も足も出せず、仲間を殺されるばかりだった機体……。
それと、今、自分は互角に渡り合っていた。
しかも、そうすることによって敵機を分断し、味方の戦いも優位にしているのだ。
「俺に喰われろ!
タイゴォン!」
叫びながら、機兵用三八式突撃銃の引き金を引く。
――ヴウウウウウウウウウウンッ!
さすがは、タイゴンというべきだろう。
トミーガンと違い、
必然として、敵に向けた射撃は、フルオートでのばら撒きとなった。
そんなことをしていれば、予備弾倉まで使い果たすのはあっという間であり……。
「弾切れか……」
ついに、最後の一発を使い果たす。
だが、それはどうやら相手の機体も同じようである。
むしろ、先にトミーガンの大部隊と交戦してなお、こちらとほぼ同時に弾切れとなるまで保たせたのだから、射撃戦においては一歩上をいかれたといえた。
だが、関係はない。
つまるところ、最後に立っていた者こそが勝者なのだから……。
「勝負だ……」
意思拡張されたカルナの意識が、
そして、それをライフルに装着する。
呼応するかのように、敵のタイゴンも銃剣をライフルに装着し……。
遮蔽から互いに姿を現し、第二ラウンドが始まった。
――ゴガンッ!
最初にぶつかり合ったのは、銃床を用いての一撃同士だ。
砲撃性能に加え、とにかく頑丈であることを売りとしている機兵用三八式突撃銃が、悲鳴を上げるかのようにきしみ合う。
だが、弾薬を使い果たしたライフルなど、もはや長物として扱う以外になく……。
暴発の恐れがなくなったそれを、お互い、縦横無尽に振り回す。
――ガッ!
――ゴッ!
――ガンッ!
銃床を用いての打撃も、銃剣を突き出しての刺突も互いに相手を捉えることはなく、ただただ手にした突撃銃を痛めつけていくだけだ。
そして、装備の消耗がより大きいのは……。
「さすがだな、タイゴン!
意思拡張された俺の動きに、よく食らいついてくる!
――だがあっ!」
今度の打撃は、敵機への直撃を狙ったものではない……。
――武器破壊だ!
カルナは、ダメージの蓄積が限界に達した相手の得物を破壊するべく、これを打ち下ろしたのである。
――バガアンッ!
狙い過たず……。
渾身の一撃を受けた敵機の機兵用三八式突撃銃が、無惨に粉砕された。
対して、こちらの銃はまだ使用可能な状態であり……。
銃剣付きライフルという槍を手にした自分に対して、タイゴンは圧倒的な不利へ追い込まれたと思える。
しかし、それこそ相手の狙いだったのである。
「――何っ!?」
手にしたライフルが破壊された、その瞬間……。
タイゴンは、迷うことなくそれを捨てていた。
捨てて、同時に
――無手による組み合い。
その流れを想定していなかったカルナは、タイゴンに自機の首を掴まれてしまう。
「う、おお……っ!?」
そこから、タイゴンが見せた動き……。
それは、技などとは到底呼べない強引な掴み投げであった。
掴んだ首を視点に、
その勢いも借りて、
「――くうっ!?」
受け身こそ取ったが、機体が受けたダメージは甚大だ。
特に、左腕部はまともに動かせなくなっていた。
「まだまだあ……」
だが、その程度で戦意を失うカルナではない。
その意思を汲み取り、
「――撤収信号!?
ちい……っ!」
機体が受け取った信号に、その動きを止める。
おそらくは、タイゴンと同じ地下壕に所属するのだろう敵の
それが、ここへ向けて接近しつつあるのだ。
それを許してしまえば、攻略中の地下壕と挟撃の形を取られてしまう……。
「勝負は預けるぞ!
タイゴォン!」
今頃は、他の部隊たちも残るタイゴンを押さえながら撤退し始めているはずだった。
果たして、敵機は追撃して――こない。
左腕がやられたとはいえ、いまだこの
こうして……。
カルナにとって念願だった
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