楽しい楽しい北海道ですわぁ。
「というわけで、お弟子に紹介したい人がいます!」
「えっ!?結婚を約束した女性ですか!?みのりさんなら何度かお会いしてますが」
「君は俺の何なんだよ。……そうじゃなくて、今回の自主トレから仲間に加わる、山田ブライアン君だ!」
「新井ししょーのお弟子2号!山田ブライアンです!よろしくお願いします、鍋川パイセン!」
「おおっ、おっきい体ですね!山田ブライアンといえば、去年ビクトリーズに入団した、北海道から来た2刀流ルーキーの!」
「そうそう、よく知ってるね!!もうルーキーじゃないけど。去年は俺もやった、喫茶店立ち寄りウキウキ体作りプログラムを1年間頑張っていたんだよ。そして今年はその成果を見せる2年目。俺とお弟子の自主トレに参加したいと、強い希望があってね」
「なるほど、そうでしたか。まあ、分からないことがあったら私に聞くといいですよ。何せ、新井さんとは長い付き合いですからね!」
「はい!先輩!よろしくお願いします!」
「うむ!いい返事ですね!!それでは早速私の荷物を持ってもらいましょう!」
「調子に乗るな! さっさと空港に向かいますよ!!」
そんなわけで、宇都宮から羽田に向かい、そこから一気に新千歳空港へ。去年と同じ、極寒の北海道自主トレである。
テーマはフィジカル。
去年はバレーボールをやったり、バドミントンをやったり、雪合戦をやったりと自由が過ぎましたのでね。
今年はしっかりテーマを絞って、10日間の自主トレですけれども、去年のような雪一面のグラウンドではなく、ピッチャーマウンドもある室内練習場を借りました。1日5万円の練習場ですけど、経費で落ちますのでちょっと奮発しました。
飛行機でお弟子と並んでピースカピースカと眠りましたから、元気いっぱいであります!
「うわあ!すごいですねえ!ビクトリーズの室内練習場とどっちが大きいのでしょう!」
「ん〜、どっこいどっこいかな。ここにはバッティングマシンはないけれど」
「新井さん、音楽セッティングしました!」
ザスッザスッと人工芝に撒かれたゴムチップを鳴らしながらのブライアンが戻って来ると、彼の所有する端末発信で、今流行りのミュージックが賑やかに流れ始める。
「よっしゃ。とりあえず眠気覚ましに、1時間走りますか」
「分かりました、ししょー!」
「はい、行きましょう!」
今回は球団のフィジカルトレーニングコーチと事前にミーティングを行いまして、1日のトレーニングメニューのアドバイスを頂いて、そのやり方をタブレットに動画として保存してきた。
初日の空路後ですから、1時間どころかさらに30分追加で走り込み、ある程度体が温まったところでストレッチと体操をして、フィジカルトレーニングに入る。
四つん這いの状態になって、右腕と左足、左腕と右足を交互に上げるようにしたり、仰向けになって、ゆっくり足を天井に向かって上げる。そしてゆっくり下ろすなど。
著しく激しい動きではないが、腹筋や背筋。太ももやケツの筋肉にじわじわと乳酸が溜まる系のやつ。
お正月明けですから、おせちやお雑煮、お汁粉やお寿司やピザやフライドチキンやドーナツや、みのりんの前よりちょっと膨らんできた気がするお乳。イクラ丼や鰻やポークステーキやらで肥えた体が引き締まる思いですね。
それもきっちり40分。
3人揃って、フーッ!とか、クッ、ククッ!ドワッ! シィー、シィー!などと、流れる音楽の端々から言葉にならないようなうめき声を上げながら、ひたすらにフィジカルトレーニングをこなした。
「こんにちは!! もみじ弁当でーす!」
「なんとかお弁当という方が来ました!」
「おおっ、さっきアプリで配達を頼んだお弁当屋さんだ。お弟子1号、俺のバッグの上にピンクのお財布あるから、お金払ってきて!2号は、外の自販機で適当に飲み物買ってきてくれ!」
「分かりました!ししょー!」
「了解です!ししょー!」
鍋川ちゃんとブライアン君はそれぞれの方向にダッシュ。
俺はその間に、ボールを入れる予備のカゴをひっくり返して即席のランチテーブルを作った。
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