隣にラーメン屋さんをとか言い出しそう。
CMが決まった時は、ヒャッホーイ!という感じだったけど、今は見えないプレッシャーをひしひしと感じていて、みのりんのお尻にもなかなか手が伸びない。
「これ、凄いね。出演料。こんなにもらえるんだ。想像してた以上かも」
「まあ、野球選手なんていつ旬が終わるか分からない上に、打率4割というインパクト料も入ってるからね。これでも代理店が中に入って高騰しすぎないようにしてもらってる」
「そうなんだ。CM、全部足したらいくら?」
「4割は税金だからね。それを差し引いても…………宝くじ当たったくらい?」
「ヤバイね。塩ラーメン何杯分?」
「なんで塩なんだよ」
「お家、建てられるね」
「確かに。思いきって建てようか。みのりんは何かこだわりたいこととかある?」
「やっぱり庭付きの一戸建て。真っ白の広々キッチン。リビングに向かってカウンターがあって、おっきい冷蔵庫が置けて、立派なオーブンがあって………コンロがガス3口にIHも。流しもタッチ式のノズルがビヨンビヨン伸びて、収納スペースも…………」
「分かった、分かった。とにかく最強のキッチンというわけだね」
「そうそう。最強のやつ。時くんにも、外せないものはあるでしょ?トレーニング器具置いたりとか、大きなガレージとか」
「そうだね。自宅にトレーニングルームがあったら、アスリートっぽいよね。家にベンチプレスとかあればすごい使えるかも。後はランニングマシンと、ティーマシン。
ビクトリーズスタジアムの室内練習場にあるんだけど、かごにボールをセットしたら、ポコンポコンってボールを上げてくれるんだよね。
50万円するみたいなんだけど、それ見た時すごい欲しくなったよ。後はやっぱり書斎かな。大きい木製のデスクにパソコンとか置いて………」
「要するにゲーム部屋でしょ?」
などと、みのりんの見透かした表情。
「パソコンだけじゃなくて、最新のゲーム機とかモニターを何台も並べて遊びたいんだよね?」
「よくお分かりで。………でもほら、そういう部屋って必要じゃん?みのりんもプライベートスペースを作ってみたら?」
「私は別に自分の部屋は、何かあったらリビングとか寝室を使えばいいと思うし……」
「いやいやいや。何をおっしゃいますか、かわい子ちゃん。もしあなたが作家先生になったりしたら、絶対仕事部屋は必要だって」
「時くんは、私と一緒にいるのは嫌?」
「そういう意味ではなくて、長い夫婦生活、お互い自分の時間をしっかり確保することも大切ですよというお話でして」
「ごめん、じょーだん。時くんはちゃんと私のこと考えてくれてるんだね」
「当たり前だろう?俺だって、1人の立派な旦那様よ」
「じゃあ、ズボンのチャックもちゃんと閉めてよ。旦那様」
野球選手であります故、ずっと宇都宮にいるのか分かりませんが、とりあえずは今住んでいる辺りに、いつかおっきめのおうちを建てましょうと。そういう確認になった。
「ということは、スケジュールとしては、来週私達が出会った記念日に婚姻届を出しに行って、なんとか3年目も頑張ってもらって、12月に式を挙げたら、新居に移り住むと」
「そういう感じだね。というわけでみのりん様に渡すものが………左手を出してごらん」
「うん……」
テーブルの上に伸びてくる彼女の白い腕。俺は左手でその腕を優しく掴むと、背中に隠していた指輪をそっと彼女の薬指にはめた。
はっとした表情を浮かべるみのりんの瞳がじわっと潤む。
手の平を数回返すようにして指輪を眺めている。
「ちょっと遅くなっちゃったけどごめんね。本当ならこの部屋で結婚しようって言った時か、熱海旅行に行った時に渡せればよかったんだけど。
3ヶ月分とは行かず、俺の給料1ヶ月分の指輪だったんだ。ちょっと頑張りすぎちゃいましたわね。それ以上高い指輪は、宇都宮には売ってなくてさ」
俺は冗談混じりに。ちょっとはにかむようにして笑った。
それに合わせて、みのりんも微笑む。
「最近の時くんのムーヴ最高だね」
みのりんはそう言って、今度は彼女の方から唇を重ねてきたのだった。
ネット銀行のイメージキャラクターにもなりましたから。
せっかくだからみのりんとその銀行の口座を作って、2人で球団本社に向かったのです。
結婚の報告というわけではないのだが、まあまだ独身と言っているやつが、給与分別振り込みの手続きに、1人の女性を連れてきたのだから、つまりはそういう関係と言っているようなものではあるが。
給与分別振り込みとは、年俸がある一定以上に高額になると、リスクマネジメントという観点からいくつかの口座に振り分けて給与を受け取りますか?
という案内がされる。
去年、年俸が3000万円を越えた時にもそう言われたのだが。
今年は億ですからね。税金もやべーことになりますから、その手続きにやってきたわけ。そのために、アプリで色々確認が出来たりするネット銀行の口座を開いてきたのだ。
ドーピング疑惑の時にお世話になって以来の本社ビル。
その時にもいたガードマンとお互いに、左腕にお注射ポーズをしてコミュニケーションを取りながらエレベーターを呼んでもらう。
「新井さん。あの時は大変でしたね」
と、ガードマンのおじさん。
「おじさんもいい経験になったでしょう?」
「ええ。私がこの入り口をディフェンスしている姿がテレビに何回も映りましたからね。夏休みとかお正月に子供達と会うときに、その時の物真似をさせられるんですよ」
という思い出を共有していくスタイル。
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