お小遣いは月いくらになるのか。

風呂上がりのフルーツ牛乳と帰りのコンビニでおつまみとアイスを買ってもらい、女性チームが買い物に行っている間に、2人であねりんの部屋に突入した。




たまに帰って来ているのか、部屋は妙な使用感があり、衣装ケースに入れられていたエンジョイステーション2を回収。



何百本ある中から、18年前に発売されたゴルフゲームを2人で楽しんでいるうちに、みのりんとお母さんが大きな買い物袋を下げて帰ってきた。






晩ごはんのメニューは、中にたっぷりチーズの入ったハンバーグと筍の煮物。カリカリとカニの身が入ったサラダ。そして、サバの竜田揚げにあんをかけたもの。





2人のお猫様が本能を押さえきれない状況になっている中、4人でキンキンに冷えたスターラガー開け、焼酎を水割りにして、美味しい食事を楽しんだ。









そして翌日。昼前にみのりんの両親とお別れをして、1発ラーメンを挟んで帰宅。





そこで行われたのは第1回の家族会議である。






議題はお金。





マネー。




財産。




1番大切なところである。





「こ、紅茶が入りました。ビクトリアガレットもあります」




ラーメン賢者ということも影響しているのだろうか、お金の話し合いと聞いて、落ち着きを取り戻したみのりんもちょっと緊張気味である。





「それでは、第1回家族会議を始めます。本日の議題はお金であります。先の契約更改でわたくし、新井時人はプロ野球史上初となります、社会人出身選手として、2年目オフでの年俸1億円の大台に乗らせていただく形になりました」






「おめでとうございます!」




「日頃から何度か申しておりますが、この功績はひとえに、山吹みのり様の心身健気なサポートや支えの賜物でして。改めてお礼を言わせて下され」




「いえいえ、そんな。逆に怖いであります」




「お互いの両親にひとまずの筋は通しましたし、間もなく書類上でも正式な夫婦となるわけでして。つきましては、財産の共有という形を取っていこうと思いますが、とりあえずそれでどうでしょうか」




「ということは、お小遣い制ではなくということですね?」




「そうそう。俺が見境なしにお金を使ってしまうような人間だったならば、全部みのりんにお任せしようと思うんですけど。


お金を使い込むタイミングもあまりなかったりするんで。お給料の半分をお渡しする形にしようかなと。それで、生活に必要なお金だったりをそこから出していくと………あっ、もちろんみのりんを信用してないとかではなく、個人事務所を立ち上げてそっちのお金とも完全に分けなきゃいけないしで……」







正直わたくしは、あまりブランド物とかには興味がなくて。




プロ野球選手といえば、数百万円のロレックスを腕に巻き、ベンツやらフェラーリやらランボルギーニやらの超高級外車を乗り回してというイメージですが。







時計は去年、3人娘からプレゼントされた3万円の時計を大事に使い、車はCMにも起用されましたから、これも何かの縁と一生イカルガの車を乗っていこうと思いましたし。




野球の道具は、アンダー社とアドバイザリー契約結んでいますから、お金を貰いつつ好きに注文出来る形ですし。




1番お金を使うのは、遠征で後輩にご飯をご馳走する時なもんですから。




プロ野球選手になって分かったのは、言うほどお金を使う機会がないということである。そのくらい試合に練習に移動に休息にと忙しい。






「そういうわけで、これからは2人で人生を歩んでいくわけですから、これまで以上に包み隠すことなくということで、色々持ってきました。今持ってる通帳とか、今回色々お仕事もらった時の契約書とか。


去年の契約更改した時に球団から渡された参考資料とか。一応みのりんも全部目を通して確認してもらいたいのですよ」




「分かりました。拝見させて頂きます」





いくつかのクリアファイルにまとめたものを1部ずつ、みのりんは手に取りながら読み込んでいく。




そんなに難しいことが書かれているわけではないが、CMのやつだったら、契約期間が半年で、1年で、出演料はいくらいくらで、もし企業イメージを損なうような事態になると、このくらいの違約金が発生致します。


シーズン中、オフ問わずに訴訟させていただくこともありますのでなでと、そんな怖い一文も、漏れなく記載されている。







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