僕が来た知らないところは、住宅街だった。変な悩み事を考えてるからこんなことになるんだ。もと来た道を戻っていこうとした。

君、同じ高校だよね?誰かがそう声をかけてきた気がした。後ろを振り返ってみる。見覚えのある顔をした女子が、制服姿で立っていた。多分、同じクラスの…名前は知らない。けど、いつも誰かに囲まれていて幸せそうな顔をしていたのは脳裏に焼き付いている。

「一緒に、私の未来を探してほしいんだ。…夏休みの間、いろいろなところに行って、いろんな景色を見てこよう。それだけでいいから。交通費も全部払うから、一緒に来てほしいの」

彼女の目が潤んでいるのが見えた。僕じゃなくていいだろ。そうつぶやくと、彼女は僕の手を握っていた。君と一緒に行きたいの。だってさ。タダでいろんなところ行けるならまあいっか。僕はこの旅を楽観視して、了承した。それと同時に、僕はそもそも未来への関心も執着もなく、自分にはこの先があることを認めていなかったんだと感じた。にわか雨に打たれる僕ら。髪の毛も、服もびちゃびちゃ。気持ち悪い。傘も持たず、家に帰った。

もう親も帰ってきていた。どうしてそんなに濡れているのか、と聞きたそうにしていた親に僕は言った。

僕は、を信じてみることにした。

彼女との旅は実りあるものになるとは思えない。僕はあくまで彼女の付き添いで、僕の未来を見つける旅じゃない。だからこそ、初めて僕が未来を諦めずに見上げられるきっかけになると思った。彼女との旅は、明日から始まる。週に3回、行きたいところをぶらつくらしい。僕に何か、この先みらいが見えたらなぁ。布団に潜り込んで、雨が当たり、滴る音を聞きながら、心のわくわくを抑えた。

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