第15話 ヴァーミリオン辺境伯


 新たに合流した住民、王女こと剣姫アストリアはひとまず、兄上と共に王宮へ戻り、俺たちが王国の敵ではないことを伝えた。


2週間後、俺は王宮に呼び出された。ヤスエやレイスもついてきた。


荘厳な王広間には王国の重臣たちが招集され、俺たちを警戒する様子で見ている。


その奥の玉座には、この国の王にして、アストリアの父であるシュタイン13世がいた。


彼の隣には黒い甲冑を身に着けた近衛騎士らしき男とアストリアがいる。


アストリアとは村で別れて以来、会っていなかった。


彼女と目が合うとこちらに笑みをむけてくる。


やがて、シュタイン王が重々しく口を開いた。


おもてをあげよ。死神殿とその一行たちよ。」


俺たちは促されるまま、おもてをあげ、その尊顔そんがんを見上げた。


そこにいたのは、想像していたよりも若々しく、たくましい鍛え上げられた身体をした、厳格そうな一人の壮年であった。


「余が国王シュタイン13世である。こうして、我らの召集に応じてくれたことにうれしく思うぞ。」


「ハ!滅相もありません。恐れ多くも陛下のご命令とあらば、従うことが臣民の義務であります。」


「ほう、臣民と申すか。だが、そなたは我が王国領を独断で占拠し、そこに定住している。アストリアがそなたを敵ではないと申しておらねば、今頃、追討軍を編成していたところだった。」


その瞬間、重々しい緊張感がその場にはりつめる。


だが、その空気を破ったのはレイスの言葉だった。


「恐れながら、それは領民を害し、彼らの生活を守らなかった陛下の責任でございます。かの地を支配していた者は皆、領民を奴隷のごとく酷使し、領主は贅沢のかぎりをつくす。そんな領主たちを野放しにした王国に責があるのです。」


ちょ!レイス何言っちゃってんのおおおおおおおおおおおおおおお!王様の御前ですよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!


「無礼者!こやつめ、命が惜しくはないのか!」


抜刀した近衛兵がレイスに剣を向ける。


「やめよ!」


王は近衛兵を静止する。


「しかし、こやつは陛下を侮辱したのですよ!命を持って償わせるほかありませぬ!」


俺はいよいよまずいと思い、レイスを助けるため、近衛兵に視線を向ける。


「ヒィ!」


バタン!


俺の圧に近衛兵は尻餅をつく。


国王は続ける。


「死神殿。配下が無礼をした。どうか、その辺で矛を収めてはくれぬか。」


俺は無意識に殺気を飛ばしていたらしい。


俺は殺気を収めた。

国王は続ける。


「そなたの言うことは正しい。それは余も自覚していることだ。それにしても、男に剣を向けられても、物怖じせぬとは。そなた、名は何と申す?」


「レイス・ヴァーミリオンと申します。」


「ヴァーミリオンだと!もしや、そなたはヴァーミリオンの姫か?」


「はい。」


「まさか、生きていたとは!すまない。そなたの父君を救うことができなかった。彼は私の無二の親友だった。それにしても、そなたのその物怖じせぬ姿、なるほど、ヴァーミリオン公の娘ならば納得がいく。」


それから、国王はかつてのヴァーミリオン公との思い出を語らい、涙した。


しばらくして、国王は口を開く。


「よかろう。レイス殿が認めるのであれば、フリストこそがヴァーミリオンの復興を目指す者である。」


国王は立ち上がり、宣言する。


「これより、フリスト・ディエッタを正式にヴァーミリオン辺境伯に任ずる。また、レイス殿を公女の地位に戻し、ヴァーミリオン公国の復興を成し遂げるのだ。これは王国の決定事項である。異を唱える者あらば、私に歯向かうことと心得よ。」


俺、ほぼ突っ立っているだけで、爵位を授与されちゃった。


余談だが、ヤスエも俺の師匠だということで、辺境伯軍参謀という階級が与えられました。


 俺たちはしばらくの間、王都にいたが、後日、村へ戻り、アストリアも正式に村の住民となった。


俺に若干の警戒心を持つ国王はアストリアを通して、俺を監視する目的があるらしい。


アストリア自身は、そんな父親の思惑を無視し、俺にベタベタしてくる。


それに対抗するかのように、ヤスエとレイスは毎夜、俺の寝室にもぐりこんでくる。


ホント、俺これからどうなっちゃうんだろ?


彼女たちのペースに流されっぱなしです。

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