第13話 兄上との一騎打ち
兄上は宙に剣を投げた。その剣を俺はキャッチする。
「剣を抜け!死神。」
「・・・・・・」
一瞬の沈黙の後、俺は剣を抜き、兄上に剣を構える。
銀髪の二人の青年が互いに剣を構えている。
刹那、兄上は俺めがけて、地面を蹴り、一気に間合いをつめる。
俺は兄上の剣激を受け流し、カウンターをたたきつける。
兄上は俺の剣筋を読み、宙へ舞い、横一閃の剣激をかわし、上空から刺突を放つ。
上空からの刺突に俺は地面を蹴り、刺突を放つ。
二つの刺突が互いの切先で受け止めあう。
キーーーーーーーーーーーン!
あたり一帯に反響する鈍い金属音が大地をゆらす。
互いに距離をとり、再び剣を構える。
兄上は八相に構え、俺は正眼に構える。
「それが、死神の剣術か。我がディエッタ流とは異なるが、不思議とお前の剣は親しみを覚える。」
「それは気のせいでしょう。私とあなたでは扱う流派は違う。私の流派はヤスエ流。ただの暗殺術だ。」
「ヤスエ流か。ヤスエ殿はさぞ立派な師なのであろうな。」
「何が言いたい?」
「いや、私の知る弟であれば、ここまでの剣術は身に着けていなかったと思ってな。」
「!」
刹那、再び、兄上の剣激が俺を襲う。俺と兄上は100合以上にわたり、戦い続ける。
どのくらいたったのだろうか?
「腕を上げたな。フリスト。」
「!」
剣激のやり取りの中、兄上は俺にしか聞こえない声で語り掛ける。
「はあああああああああああああああああああ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
互いに一歩も譲らない剣技のやりとりは二人には二年ぶりの兄弟の語り合いのごとくであった。
「兄上、やはり私だと気付いていたのですか?」
「当然だ。弟を見分けられぬ兄などどこにいるのだ。会えてうれしいぞ。」
俺たちは鍔迫り合いをしながら、互いを突き飛ばす。
俺はヤスエ師匠からさずかった奥義、逆袈裟斬りを放つ。
兄上は体裁きでそれをかわし、俺の後ろから面を放つ。
俺はそれをはじき、兄上の胴を狙いうとうとする。
兄上は刹那の間に、胴を防御する。
俺は兄上の横をそのまま抜ける。
俺たち二人は互いに背を向けたままだ。
互いにゆっくりと正面に向かい合う。
「死神殿!貴殿は強い。」
「ディエッタ殿こそ!」
空気が変わった。
兄上の素早い身のこなしに俺も条件反射で応じる。
二人の剣激はさらに加速 加速 加速!
連撃 連撃 連撃 超連撃!
やがて、無限にも感じられるほどの激しい剣激の後、兄上の剣は音を立てて、折れた。
その直後、兄上は剣を捨てた。
「私の負けだ。」
「!」
俺と兄上の戦いを見ていたギャラリーたちは唖然としていた。ヤスエと王女を除いては。
「両人とも見事な試合だった。死神殿、やはり私とも試合をしてはくれないか?貴殿らの試合を見ていて、私の剣士としての血がさわいだのだ。」
俺はレイスと師匠を見た。
二人ともうなずいている。
「わかりました。私で良ければ、お相手いたします。」
「引き受けてくれて感謝する。今はそなたも疲れていよう。明日でも私は構わない。」
「お心遣い、感謝します。しかし、心配ご無用。今、お相手いたします。」
「死神殿、本気か?言っておくが、私は一度剣を抜いたら、容赦はせぬぞ。」
「覚悟の上。」
「よかろう。では参る。」
その瞬間、あたり一帯に再び、緊張が走った。
俺は剣を納刀し、抜刀の構えに移った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます