第12話 王国から王女様と兄上が来ました
俺はレイスと共に、屋敷へと戻った。
「兄貴!どこ行ってたんすか!」
「え、どこって、森だけど。」
「また剣術訓練ですか?こっちはそれどこじゃないんですよ。」
「どうしたんだ?そんなに慌てて。」
「あれを見てください。」
俺は指さされた方角を屋敷の窓から見る。
そこには王家の紋章が入った一台の馬車とそれを護衛する近衛騎士たちの姿があった。
「兄上?」
あれはエド兄上なのか?ひとり銀髪の騎士が城門の外にいる。
「!」
今、目が合った。
え、俺って気づいてるパターンですか?
ヤバイ ヤバイ ヤバイ ヤバイ
久しぶりの兄上の迫力に、冷や汗をかいていると弟子のルイスは怪訝そうに俺をみる。
「兄貴、どうしたんです?」
「いや、なんでもない。それよりも彼らは何者だ?」
「なんでも、王国からの使者だと名乗っております。今はヤスエ様が対応しておられます。」
「俺、会わなきゃダメかな?」
「当たり前でしょ!ヤスエ様は兄貴が来ないから、そのつなぎをしてただけっすよ!しっかりしてくださいよ!大将!」
俺は渋々、城門まで出向くことに決めた。
とりあえず、仮面しとこう。
素顔を隠すために、仮面を身に着け、彼らに会いに行った。
「おう、『死神』殿。お客様が来ているぞ。」
「師匠、茶化さないでください。」
俺とヤスエ師匠がいつも通りの漫才みたいなやり取りをしていると、目の前の美女は声を発した。
「そなたが死神殿か?」
「あなたは?」
「おっと、失礼した。私はシュタイン王国第三王女アストリア・シュタインだ。ここには、王国の使者として、私自らが来た。」
「
「ほう、そなたのような強者にも私の異名がとどろいているとはな。」
「もちろんです。王国最強の剣士様の名を知らぬわけがありません。」
「死神殿。もっと不遜な男だと思っていたぞ。そなたのその態度は少し意外であった。」
「何か、ご無礼を働いたでしょうか?」
「そう慌てるな。私がここに来た目的はただひとつだ。それは貴殿らが我が王国の敵なのか味方なのかを見極めるためにここに来た。」
「!」
そこにいた者たちの間に緊張が走る。
「我らの王国領で貴殿らは、独自に村を建てた。ある意味、国家に反旗を翻している行為ともいえる。だが、幸いにも、貴殿らが排除した領主たちは、我が王国も手を焼いていた連中だ。領民を不当に搾取し続けていたのだ。貴殿らが動かなくても、我ら王族が動いていただろう。貴殿らが我らの予定を先取りしただけにすぎぬ。」
「私たちは確かに、王国領に無断で村を建てました。しかし、それは
「そなたがそう申しても、言葉だけでは信ずるに足らん。そうだな。貴殿は剣術の達人だそうだな。私と一騎打ちしてもらおう。」
「そんな、恐れ多い。王女様に剣を向けるだなどと、誰ができましょうか?どうか、代理の者をお立てください。しからば、私自らがお相手いたしましょう。」
「私は王女ではなく、一人の剣士として、貴殿に一騎打ちを申し込んでいる。今は立場を気にしなくても良い。だが、そうだな。ふむ、わかった。貴殿の申し出を受け入れよう。」
「そのお役目、このエド・ディエッタにお任せいただけませぬか?」
「よかろう。ディエッタの武勇、存分に見せてもらうぞ。」
「御意。」
え、兄上?オイオイオイオイオイオイオイオイオイオイ、ヤバイって!正体ばれるんじゃないの?ていうか、俺のこと勘づいている感じですか?
そうして、兄上は俺の前に出て、剣を構える。
マジで
俺は逃げ出したい気持ちを押し殺しながら、二年ぶりの兄上に向き直った。
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