第4話 ディエッタ男爵の晩餐
フリストが追放されてから1週間後の夜。その日は休暇で帰省していたフリストの二人の兄が家族団らんの時を満喫していた。
「父上。そういえばフリストの姿が見えませんね。あいつはどこにいるのですか?」
長兄のエドがディエッタ男爵に問うた。
「あいつはもうここにはいない。先日、追放処分とした。」
「追放したのですか!?なぜそんなことを!?」
「お前たち二人の兄と違い、奴はただの
「父上!あなたはフリストのことをわかっていない。あなたが思っているほど、ダメな奴ではありません。あいつを慕う領民が多いことが何よりの証拠ではないですか!」
「あいつはただの怠け者の遊び人だ。お前たちと違い、王国士官学校の試験に落ち、貴族の面汚しだ。あいつはどこで役立つのだ?」
「騎士になることがすべてではありません。あいつは民の心をつかんでいる。それはなぜかお分かりか?私がここを留守にしていた時、王国は大飢饉に見舞われた。そんなとき、あいつだけが、領民に食料を分け与えたという噂があるのですよ。」
「ああ。その話か。それならば、私も耳にしたことがある。しかし、奴にそんな力があるとは思えん。遊んでいるだけの奴だ。そんな虚言に惑わされるとは。情けないぞ。エドよ。」
「父上!」
「まあまあ。兄上も父上もその辺にしておきましょうよ。久しぶりに家族が集まったんです。食事を楽しみましょう。ねえ、母上?」
「ええ。そうよ。今は食事を楽しみましょう。エド、ありがとうね。でも、あの子なら心配いらないわ。きっと大丈夫。うまくやっていると思うわ。」
「母上。」
その日の夕食にはフリストの話題はそれっきりでなかった。ディエッタ男爵も初めはフリストの話題で不機嫌だったが、久しぶりに会った息子たちとの再会を素直に喜んだ。そうして、その日は穏やかに過ぎた。
数日後。
「エドにジョニー、元気でね。また帰ってきてね。」
「はい。母上。また帰ってきます。母上もお体にお気をつけて。」
そして三人は深い抱擁をした。
「父上。私はフリストを探します。私は任務で各地を移動しています。もしかしたら、あいつの手がかりがあるかもしれません。」
「またその話か。好きにしろ。」
「ええ、好きにします。それと、父上もお体ご自愛下さい。」
そう言ってきびすをかえし、二人の兄はディエッタ領を後にした。
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