第5話 追放後のフリスト


 俺はヤスエと共に、旅をしている。彼女は自身を強いと言っていたが、本当だった。


俺たちは互いに行く当てもなく、方向音痴なので、太陽や星などを目印に適当に目的地を決めて歩く日々だ。


行く先々で、重税や圧政に苦しむ村人がいるので、修行の一環として、悪徳領主をぶっ殺してきた。もちろん顔を隠す覆面は必須アイテムである。


気が付けば、俺とヤスエ以外に20人もの部下が旅に同行するようになった。20人の内訳として、ほぼ親に借金の方に売られたかわいそうな奴隷落ちした少年や少女たちである。


彼らは決まって、悪徳領主の屋敷の地下牢に軟禁されており、少女たちは兵士たちの性欲のはけ口にされそうになっていた。


俺とヤスエは義賊として、名をはせた。しかし、俺たちには確固たる信念があるわけではない。


なんかこう、適当に食うために、悪徳領主の屋敷を襲ってたら、成り行きで、部下ができただけなんだ。


「兄貴、今日はどの村を開放しますか?」


「フリスト様、私達はいかような命にも喜んで従います。」


彼ら彼女らはいつもこんな感じだ。


マジで、俺はなんでこうなったんだろ?


ていうか、これ実家にバレたらヤバくね?


絶対、親父から勘当されるでしょ?


いや、下手したら、国家反逆罪で実家ごと処刑されるかも。


ヤバイ。あんまよく考えてなかった。


「何をそんなに考え込んでいるのだ?フリストお前の取り柄は深く考えすぎず、前向きなことだぞ。」


なんか、ヤスエが言ってるな。ていうか、お前のせいだろ!


いや、俺が馬鹿だった。こいつのテンションに乗せられた。


「困っている者を助けることこそ、我が掟。お前も弟子ならば、それに従ってもらおう。」


最初は本当に純粋だったんだ。国家に仇なす気なんて、なかった。


だが、こうして、振り返ってみれば、俺たちのやっていることは立派なテロなんじゃないか?


それに気が付いたのが、最近なんだ。


何か、部下も次はどの村を開放するのか聞いてくるし。その時の目は期待するような眼差しだし。


違う!違うんだあああああああ!俺は、ただ飯が食いたいだけだったんだああああああ!


ちなみに、俺が実家を追放されてから、今日でちょうど、2年目になる。俺は師匠の指導の甲斐あってか、剣術に磨きがかかった。


ある時、食料を近くの領主館からくすねようと忍びこんだが、脱出する時、地下牢の少女と出会った。


彼女は瘦せ細っており、今にも栄養不良で死にそうだった。


俺の良心が彼女を助けるべきだと言った。


俺は自分の信じるまま、彼女に食料を与え、一緒に屋敷を脱出しようとした。


そこに傭兵10人に囲まれる。


「おいおい、一人でここに忍び込むとはとんだ、命知らずだな。領主様のコレクションを盗むとは死にたいらしい。殺してやる。」


一斉に抜刀し、彼らが俺に斬りかかる。


俺は彼女を下がらせ、相手の一人の剣激をはじき、胴に一太刀打ち込み両断し、そのまま、通り過ぎる。


振り向きざま、敵の刺突が俺の脇腹をめがけてくるので、体裁きでかわし、敵の間合いに入り込む。


そのまま、敵の首を切り落とし、2m先の敵に刀を投げつける。


投げつけた刀が相手の腹にめりこむ、刹那、俺は地面を蹴り、そいつめがけて距離をつめる。


背後から、俺の首めがけて、横一閃に斬撃が襲うが、間一髪それをかわし、死体に刺さった、刀を抜き、敵の小手を斬り落とす。


少女に襲い掛かる敵の横を一瞬で通り過ぎ、血振りをして納刀する。


納刀した刹那、敵の上半身と下半身は地面に崩れ落ちる。


そうして、俺は彼女を救った。この少女こそ、俺を師匠と慕ってくる一番弟子の

レイスだ。


 彼女は俺たちの旅に同行を希望し、以来、俺たちの諜報部隊の隊長を務めている。


ちなみに、諜報部隊とかもレイスが勝手に作った。


もうひとつ、変わったことと言えば、俺はこの2年でかなり、痩せたらしい。自分では気づかないのだが、師匠が言うには、今の俺ならば、女性がほっとかないほどだという。


それは、言い過ぎな気もするが、レイスが最近顔を赤らめて、時々、俺に視線を向けているのも関係があるのかな?


最近、レイスは俺を見るとすぐに立ち去ってしまうし。まさか、俺の容姿がととのってるなんて、嘘だよな。レイスの態度を視れば、明らかだもんな。


「この鈍感男が。」


最近、ヤスエ師匠の小言がひどいです。

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