第6話
「学校で何かあった?」
「……うん。実はね――」
私は三伏君から告白されたことをお母さんに話した。
この手の話をすれば根彫り葉彫り聞いてくると話してから思い至ったけれど、意外にもお母さんはしっかりと真面目に話を聞いてくれた。
「――なるほど。それは難しい話だね」
「お母さんも告白されたことあるの?」
「あるよ。自分で言うのもおかしいけど、お母さん高校時代はクラスのマドンナ的存在だったからね」
お母さんは苦笑気味に言う。
確かにお母さんは娘の私の目から見ても奇麗だと思う。二人で買い物に行くと姉妹に間違えられることがあるから、これは客観的にみても事実なのだろう。故に学生時代、モテモテだったと聞いてもそれほど意外に思わなかった。
「その時は、どうしたの?」
「真剣に考えた」
「……それだけ?」
「うん。それだけ。だけどこれが本当に大変ったりゃありゃしないの。いっぱいいっぱい悩んで、悩むことに悩んで、熱を出して、看病されて……あはは、そういえば私も雪葫と似たようなことしてたんだね。
でもそれだけ悩めるってことは、それだけ相手も真剣だった、そう確信するに値する人だってことだよね。私は三伏君って子のことをまったく知らないけど、きっとその子も、雪葫が真剣に悩んだ末に決めたことなら、受け入れてくれるよ」
「そうかな?」
「そうだよ」
「……そっか」
お母さんの言葉は芯に沁みるように、自然と受け入れられた。
その感覚と共に、瞼が急激に重たくなってきた。
「少し、眠くなってきた」
「あはは。それじゃあそのまま寝ちゃいなさい。お昼くらいに起こすからね」
「うん……」
お母さんが食器を片手に部屋を出ていく音を聞きながら、私の意識は眠りの園へと引っ張られていく。
こう何度も夢を見るのはおかしい、なんて考えは微塵も浮かばなかった。不思議な懐かしさだけがその胸中を満たしていた。
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