第6章 第112話
「偉大なる『マイゴウ』、『
ケシュカルの口と声で、
「お隠れになったとは言え、彼らはここで何が起こるか、誰が来たのか、そういったことには非常に敏感で、また強い興味を持っています。今も、我々の計り知れぬ方法で、この部屋の様子をうかがっているはずです」
なるほど、それか。雪風は、『処置室』及び今居る部屋の中に充満する
「つまり、あたし達は監視されてる、って事ね」
雪風の声は、固い。
「監視とは、穏やかではない物言いですね。彼らは臆病で、しかし好奇心旺盛で、興味を抑えきれていないだけです」
「この縦穴は、その彼らとやらの鉱山で、この『都』ってのはその鉱山をカモフラージュするためにでっち上げた、野次馬を煙に巻くための欺瞞のための施設だって聞いたけど?」
一瞬、
「……どこで、それを……」
「どこでもいいじゃん」
雪風の声も、固いままだ。
「別にあたしは、その事を咎めようとかは思ってないわ。あたし達のあずかり知らぬ目的で、あたし達に毒にも薬にもならない範囲で穴掘ってる分にはどうでもいいって思ってる。その上で、そこに興味本位で邪魔する奴が行くとしたら、穴掘ってる方としては邪魔されちゃかなわないから排除しようとしてもそりゃ当たり前だって思うし、その野次馬がどうなっても、それは自己責任だから、あたしは知ったこっちゃないわ」
「……それは、大変に……」
「でもね」
元の笑顔を取りもどした
「あたしはね、あたしに縁のある誰かが傷つくようなら、それは絶対に許さない。もちろん、こっちに非がありゃ話は別だけど、だとしても、よ」
雪風の目に、強い光が灯る。
「あたしの友達が傷つけられたら、それはそれで、絶対に許さないわ」
「……そういう、『人間』のふるまいが、『
「この『都』の目的の一つは、そういった『人間』のふるまいを研究することだとも聞いています」
「お、恐れながら、王子」
いくらかマシになったとは言え、まだ青い顔のままのダワが、話に割り込む。
「『
「それは、もしや、我々がまだ知らされていない神の名でありましょうか?」
ペマも、ダワの言葉を引き継ぐ形で、
「良い質問です」
ペマとダワに向き直った、ケシュカルの頭の上に載る
「『
夢見るような視線を宙に泳がせ、
「
「それが、そのようなものが、『
「え……」
「いや、その……」
立て板に水の
「要するに、この地球を含む太陽系の外、外宇宙から来た異星人、地球人類とは出自も生態も全く別にする、異性生命体。そういう事でしょ?」
21世紀の最新の科学知識に裏打ちされた雪風の理解力は、
「その通りです。流石は『福音の少女』、聡明でいらっしゃいますね」
「分かんないのは」
「『
『ユゴスキノコ』の一言に、一瞬だが明らかに気分を害した眼差しを示した
「……さてはモーセスですね?なるほど、先ほどの件も……ええ、
「興味深いわね」
雪風の片頬の口角が、少しだけ、上がる。
「カビやキノコの類いが知性を持っちゃいけないとは言わないし、実際に粘菌はビックリするくらい頭いいらしいけど、実に興味深いわ」
「彼らからすれば、この地球上にはびこる
両手を広げ、満面の笑みで、
「独立した脳を持ち、個としての意識も独立し、それでありながらその多くは集団を構成し、統一された思考もなしに、ある程度まで統制された社会行動を行う。『
「光栄なことだわ」
雪風の口角が、さらに上がる、皮肉そうに。
「外宇宙からの高度に知的な訪問者に、正しく恐れられるとは、土着の原始生命体としては光栄の極みだわ」
「その通りです」
「土着の、生命体としては決して強靱でも強固でもない、しかしながら拡張性、言い換えれば応用に長け、道具を使うことに長け、アンバランスなほどに戦闘力も高い、そのような生物は、あらゆる意味で正反対の『
――こいつ、これっぽっちも皮肉が通じてねぇな……――
雪風は、内心そう思いつつも、そろそろ頃合いだと、聞かなければいけない質問を二つ、切り出す。
「じゃあ、その驚異的な土着生物に免じて、教えてほしいんだけど?」
「まず、さっきからの物言い、まるであんたは『地球人類』じゃないみたいな口ぶりだけど。『
雪風の目が、わずかに細くなる。
「今、ケシュカルは、どういう状態?生きてるって言えるの?無事なの?」
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本年最初の更新であります。
書き始めた時は、年を越すとは夢にも思いませんでした。
話、佳境に入ってます。もうしばらく、お付き合いいただければ幸甚です。
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