色褪せない憧れ【第十九回「きらきら」】

 「お兄さん、お兄さん!」

 子どもの声に、古書店の店主は本から顔を上げる。本がつまった本棚の間を、男の子が駆けてくる。

「なんだい?」

「これ、この本に挟まってた!」

 男の子が片手で掲げたのは、一昔前の特撮ヒーロー図鑑。もう片方の手には、表面が輝いているカードが握られている。店主が図鑑の方に目をやると、カードに描かれたヒーローが格好良く決めポーズをしている。

「それは、当時上映されていた映画の特典だね」

「すっげー、レアだ!」

 男の子はぱっと表情を明るくし、ポケットからちゃりちゃりと小銭を取り出した。店主はにこりと頷いた。

 大事に図鑑を抱きしめる男の子の肩に、赤いヒーローが胸をはって立っている。

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続:300字で綴る物語 暁 湊 @akatsuki

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