人酔い桜【第十五回「酔う」】
「いやはや、面目ない」
他の木々より一足早く花を咲かせた老樹の翁が笑う。彼がくつくつと笑う度、枝が揺れる。
「歳を取ると色々と弱くなって敵わんね」
「まあ、あれだけ人が来たらな」
「他より早起きしたもんな、おじいちゃん」
「ははは、うっかりしたわい」
翁の笑い声が、夜風に乗って流れていく。周囲の木々はまだ眠っている。そのため、人々はこの老樹の元に集い、一足早い春の訪れを目で見て、匂いを嗅いで感じていく。そんな彼らをにこにこと見守っていたが、例年にない人の数に樹生初の人酔いをすることになってしまった。
運び屋が持ってきた薬を飲みながら、これもいい経験だと翁は笑う。起きた仲間に話題が一つ増えた、と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます