成長ブースト【第九回「育つ/育てる」】

 一人と一匹は、青々と茂った巨木をぽかんと見上げている。

「ねぇ、この木、見覚えない?」

「多分、一週間ほど前に運んだやつ、だと思う」

 肩に乗った相棒の獣の問いかけに、運び屋は自信なさげに答える。確かに、これとよく似た木を運んだが、その時は手に収まるほどの大きさだった。この辺りは植物の生育によい、と聞いてはいたが、流石にこの成長速度はおかしい。

「あ、運び屋さん。この前はお世話になりました。いやー、研究の成果がこんなに早く現れるなんて思わなかったなぁ」

 上機嫌でやってきた件の依頼主は、木の根元にジョウロを傾ける。そこには『五十倍濃度のカフェインドリンク原液』と書かれたラベルが貼ってあった。

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