第9話 生徒が怪異なので
職員室に行くとちょうど神無月先生がいたので、周りの先生たちに話を聞かれぬよう科学準備室に手伝いに来いという名目で行くことになった。
そこで今日一日起きるであろうことを話す。
そうしていくうちに何故か神無月先生の様子が少しおかしくなっていった気がする。
眉をひそめて疲れた様子をしているというか。
頭が痛そうにしていて、何か嫌なことを聞いたかのような。
いやまあ怪異について聞いているんだから胸糞悪くなるのは当然か。だって今回の怪異は生徒が憑依されているようなものなのだから。
「まあつまり……霧島桜という少女が怪異となり、襲い掛かってくると……」
「はい。彼女は元々小さい頃からある怪異に憑りつかれていて……それが何なのかについては私もクリアできたわけじゃないので知らないんですが……その子と一定の距離を保ったまま逃げ続けて、そうして彼女をちゃんと元に戻さなきゃいけないんです。そうすれば本物の化け物が出てきて襲って来るので、そこからは本気で逃げて脱出すればいいだけです」
「簡単に言ってくれるじゃないか」
「言うだけならですってば! 実際にプレイした時は本当に何度も死んでて大変だったんですからね!! それが現実に起きるとか……私の人生って今日までなのかな……」
「ああ、悪かったからうなだれるのをやめろ。俺もちゃんと考えてやる」
「はい……」
小さく溜息を吐いた神無月先生が、口を開く。
「つまり、霧島桜の首と身体が分離してしまうから、その首を探し出さなきゃいけないということだな?」
「はい!」
まあ、いわゆる霧島桜がデュラハンみたいになってしまうので、その首を見つけ出して彼女の身体と合体させて脱出ということである。
襲い掛かってくる霧島桜の身体から一定の距離で逃げなければいけないということなのだが、そうしないと彼女は首を見つけてももう死んでいるような状況になってしまうという理不尽設定があった。
霧島桜とは別の化け物がいるせいなのか。それとも霧島桜の身体を玩具として何かをしているからなのか。私にはよくわからないけれど……。
しかし何故かは知らないがゲームでは霧島桜の身体は目もないのに見えているかのような動きを見せる。一応プロローグでは聴覚を中心とした敵が出てきているように、五感をテーマとしたそれぞれの敵が出てくるはずなのだ。
だからまあ、霧島桜の身体もどれかの五感が特化した敵である可能性が高い。そこらへんはゲームで何度も何度も理不尽にゲームオーバーになってはリトライを繰り返したけれど、クリアするまでよくわからなかったんだよねぇ……うーん……。
「神無月先生。今日はどうやって生き残ればいいでしょうか」
「そうだな。……いや、その前にやりたいことがある。少し待て」
「はい?」
何かを決意した神無月先生に、私は小さく首を傾けたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます