第8話 落っことしたもの
よろこべ諸君!
君たちは選ばれた危険人物だ!
一言でいえば妖精に目を付けられ弄ばれたことのあるせいで魂がそりゃあもう大変な状態になってしまい、怪物となってしまったということさ!
……えっ? 何を言っているのか分かってないって?
ハハハ。仕方がないな。この私が簡単に教えてやろう!!
それは君たちが生まれ変わる前。かつて君たちにとっての前世にて異世界から妖精により強制転生、または強制転移を行われた。そこで様々な犠牲を払った君たちは、いうなれば世界を滅ぼしかけたことのある強い力を持ったラスボス共になってしまったということさ!!
……ああ、君はまだまともな方だよ。
まあどっかに落っことしちゃったんだろうね!
────そうそう、今の君みたいに!
というわけで、そんな君たちを敵に回してはこの世界が滅びるのも時間の問題。だから私は君たちを選び、境界線の世界の管理者にしようと思う!
まあつまり、ヒーローにしてやりたいわけだよ!
あのくだらない妖精がダークヒーローから闇堕ちしたヴィランなら。君たちはちゃんとしたヒーローになってもらいたいんだよね!
異世界に行ったことのある特殊な魂の生まれ変わりが数多く存在するのが、この世界だからね。
……うんうん、そうだよ。気を付けて。
アレを目覚めさせちゃ駄目だ。
ここでは元々の人間達が一時的に怪物へ変異してしまうからね。
君は他の者達と同じく、彼らを救うヒーローになってくれたまえ!!
────ああ、君に言っているんじゃないよ。何を覗き見してるんだい?
酷く汗をかいたまま目が覚めた。
悪夢を見た気がした。気分が悪くなるほどの何か。ふと階段を突き落とされたような嫌な感覚。
お化けか何かいるんじゃないかと思いベッドのサイドテーブルに置いていた神無月先生から貰った資料を手に持ち、何か異様なものはないか確認する。
しかし何もいない。何かがいる様子は見られない。
「あれ、夢……?」
夢だとしたら良かった。そう私はホッと安堵の息をつく。
何だろう。覚えていないけれど変な夢を見た気がする。
すごく何か大事なことを言われていたような。言われていないような。
「ああうん。でも次は……第一話かぁ……」
プロローグ部分である初日はなんとか切り抜けた。しかしその次はまだ難しい。
だって次に出てくる怪異は────私と同じクラスの女子生徒なんだから。
「怪異を見逃したらゲームオーバーで、その怪異から一定の距離を保ったまま逃げ続けるとか、本当にきつい……」
次はどうやって主人公を説得しつつ生き延びようか。
次を思うと憂欝になるが仕方がない。神無月先生に頼るしかないか……!!!
「よし、頑張ろう! 卒業してもずっと生きるために! 目指せ老衰!!」
私は一度両頬を大きく叩いた後、行動を開始した。
早めに学校に向かおう。
まだ朝は早いし、いるかどうかわからないけれど……神無月先生とゆっくり話すためには学校に行って作戦会議をしなきゃいけないのだから。
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