第14話 変な奴と初授業
早歩きのおかげで初めての授業になんとか間に合った三人は、何事もなかったかのように授業を受けていた。
初回だから自己紹介でも始めるのかと思ったが、軽い紹介だけ終えて、すぐに授業が始まる。
「え~、この問題は……そうだな、教科書見ながら自力でやってみろ。少ししたら充てるからな~?」
その一言に、教室内がにわかにざわめく。まぁ、何ら学習していない範囲の問題をいきなり解けと言われ、挙句当てられるともなれば至極当然の反応とも言えるだろう。
────だが、この学校はここからが違う。
その言葉を受けた学生たちは一斉にペンを走らせ、解を導き出す。その手に解への迷いはなく、スラスラと途中経過を書き連ねる。
教師がセットしたアラームがなる頃には、ほぼ全員が問題を解き終えていた。
「よし、じゃあ木南豪。前に出て解いてみろ」
「はい」
そうして詞詠は黒板の前に立ち、チョークを手に取る。それとほぼ同じタイミングで、教師が口を開いた。
「入学式で何やら騒いだようだが……この学校では勉学に励めなければなぁ?」
意地悪い笑みを浮かべながらボソッとこぼした言葉に、詞詠と──そして面真も、これが教師により仕向けられたものだと気づく。
この学校は、こと勉学においては近隣で間違いなくトップの学校である。
その学校が持つ風格を崩したとも言える詞詠は、教師から疎まれていても仕方のないことであった。
この学校の生徒が持つ学力の高さを活かした手段と言えるだろう。────相手が、詞詠でなければだが。
詞詠は回答を記すと、その横に答えの基となった根拠までをも書き連ねていく。
面真から見ても完璧だと思える回答を完成させた後、詞詠は振り返る。
「これでどうですか?」
「…………正解だ。よく勉強しているな」
「一応、学年二位ですので」
ボソリとそう言い残して、詞詠は席に戻る。
詞詠を指した教師は、一瞬苦々しげな顔をしたもののすぐに、にこやかな顔に戻る。
授業中の私語は当然よろしくないので、感想を紙に書いて筆談のようにする。
「よく解けたな」
「ナメられてる? これでも私、学年二位なんだけど」
聞き飽きた文句ではあるものの、文章にされると改めてすごみを感じる。
その後も時折指されることはあったが、詞詠はそのことごとくを退ける。
そして──戦いの終わりを告げるチャイムが鳴る。
ややしょげた顔の教師を見送った後、詞詠はサムズアップをしてくる。
それに返すようにサムズアップをし、二人ほぼ同時に手を掲げ、互いの手に当てて打ち鳴らす。
小気味良い音が響くとともに、クラスのそこかしこから「ビックリした……」という声が聞こえるのだった。
僕の周りには奇人注意報が発令されている〜真面目に生きたいだけなのに、隣人達が許してはくれないようです 抹茶味のきび団子 @natunomisogi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。僕の周りには奇人注意報が発令されている〜真面目に生きたいだけなのに、隣人達が許してはくれないようですの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます