第12話 変な奴と友人関係
「詞、詠……?」
「そうだよ? どうかした?」
そう答える詞詠の顔は、お風呂上がりのようにキラキラしている。
「いや、いきなり来たから──」
「別にいいじゃん! その子はなんか面白そうだし……私も一緒に行って、もう少し話してみようかな、って!」
うろたえるだけの面真に対して、未だキラキラした顔を見せる詞詠。ここまで対比的な二人も珍しいだろうか。
「木南豪さん……わたくしと面真さんの時間を邪魔しないでくださ──」
「ありがとう詞詠! 3人のほうが人混みを抜けやすいから助かる!」
「生目くんが言うなら仕方ないです!! 行きましょう!」
有記の声を皮切りに、3人ともが動き出す。手のひら返しが早いことには誰もつっこまない。
駆け抜けていく三人の横目には、何事かというような顔をしたクラスメートたち。駆け抜ける三人を見ては、ぶつかっては危ないと脇へと避けていく。
「アッハハ!! 皆が避けていってくれるね! 芸能人みたい!!」
「あっ、コラ詞詠! 教室はいいけど廊下は走るなよ!」
「相変わらず生真面目ですね……生目くんは。でもそういうところも尊敬しています……!」
尊敬の眼差しを向けながらも走る有記はしかし、すぐに息切れして止まってしまう。
「ハァ……ハァ……ごめ、んなさい。わたくしの、せいで……」
「気にしなくていいよ。あの場じゃなくても、最終的に落ち着いてくれればいいさ」
「────それじゃあ! 事情聴取は朝に軽く済ませたし……」
詞詠はそこで一旦呼吸を挟む。大きく息を吸い、右手をすっと前に差し出し、口を開く。
「私と、友達になろう!!」
その動きのまま、数瞬の時間が経過する。最初はなんの応答もないかのように思われたが、有記の方も少しずつ詞詠のもとへと歩み寄る。
「…………嫌ですけど」
空間が、止まった。
「正直……生目くんに危害を加えるような人と、関わりたくないという思いですね」
「危害を加えるつもりはないよ? 面真くんは私の面白い友達第一号だから、迂闊に攻撃しちゃうつもりもないしね!」
未だに疑いのまなざしを向ける有記に、じりじりと距離を詰める詞詠。
なんだか、見ていて飽きない二人だった。
「そういうことなら……いえ、でもまだあなたに対する信頼は……」
なおも迷っている有記に対して、詞詠はじわじわと圧をかける。
「ほら、おいでよ……私と友達になろうよ……」
詞詠の言葉に同調したわけでは無いが、どうせなら友人になってもらった方がいいかと面真が口を開こうとする。
────が。
「私と友達になってくれれば、面真くんと毎朝登校できるよ?」
「よろしくお願いします」
訪れた終幕は、あまりにもあっけないものだった。
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