第14話.憧れた姿
1999年の有馬記念。とある1人の女性騎手が引退し、彼女の7年間の伝説が幕を閉じた。
『
天才女性騎手・卯月
7年間で978勝という超人的な結果を残してターフを去る。競馬ファンも、最後のウイニングランを暖かい拍手と早苗コールで迎えた。
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数年後、5月の東京競馬場。
「あれがパパなの〜?勝ったの〜?」
「そうだよ〜、ほら手を振ってご覧?」
「パパ〜!!おめでと〜!!!」
7万人の観客が詰めかけた競馬場。ウイニングランを行う馬の鞍上は、卯月
小さな女の子の精一杯の叫び。普通は大歓声に掻き消される。が、その声に応えるように、日本ダービー4勝目を挙げた鞍上の男はスタンドのその少女達へ向かってガッツポーズを見せた。
「パパこっちみた!!」
「良かったね〜!」
「パパかっこい〜…」
「でしょ〜?世界一かっこいいんだよ、私たちのパパは」
興味津々でダービージョッキーを見つめる少女を、手を繋いで見守る女性が微笑み言葉をかけた。
「私もパパみたいになりた〜い!!」
「え〜、お馬さん乗れるかな〜?」
「乗れるもん!!パパみたいになるもん!!」
「あはは、じゃあ帰る時お馬さん乗りいこっか」
「やったあ!!」
(がんばればパパみたいになれるよ、だって私達の娘なんだから………
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2021年5月2日、阪神競馬場。
「天才の子は、やがて両親も越える…」
腕を組み、パドックで周回を始めている馬達を見つめているのはフォルテナイト、ブルーフレアを管理する
今日はGI、天皇賞・春が行われる。璃乃は、阪神大賞典を制したフォルテナイトとコンビを組み、GI初騎乗を果たすのだ。
「楽しみすぎる1戦やな…」
彼女の父と母が紡いだ伝説。第2章が、今始まろうとしていた。阪神競馬場には、暖かい春風が吹いている。
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