第11.5話.春のGIへ

フェブラリーSの興奮は過ぎ、3月には今年の3歳路線、クラシックを占う戦いが次々と訪れる。


まずは、牝馬クラシック一冠目・桜花おうか賞(GIのトライアルレース、チューリップ賞(GII)が阪神競馬場で行われ、次週に、牡馬クラシック1冠目・皐月さつき賞(GI)のトライアルレース、弥生やよい賞(GII)が中山競馬場で行われた。


それぞれ、本番と同じ舞台・距離の芝1600m、芝2000mで争われるレースは、過去にも多くの名馬がこのレースをステップレースとして使ってきた。


まずはチューリップ賞。昨年の2歳女王決定戦である「阪神ジュベナイルフィリーズ」の勝ち馬・キャロルベールが不在ということもあり、混戦模様となった。


1番人気に推されたのは、阪神JF(ジュベナイルフィリーズ)の3着馬であり、4戦3勝のアンドルブライダ。鞍上は先月のフェブラリーS(GI)を制したレジェンド・武田騎手だ。


平均ペースが流れる中で道中掛かりっぱなしだったアンドルブライドだったが、直線入口で先頭に立つと最後は能力の違いを見せつけ3馬身差の快勝。桜花賞へ向けていいスタートを切った。


一方の弥生賞。若駒わかごまステークスを含め無傷の3連勝中、1番人気・キッドナイトは出遅れて後方からの競馬に。直線に入ってからジリジリと脚を伸ばすも前を捉えきれず2着。先に抜け出した3番人気・アーカイブフィルムが追撃を振り切り重賞初制覇。皐月賞へ向けてまた1頭楽しみな馬が増えたという結果になった。



そして……


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『先頭抜けた!リンクロゼリオだ!ゴールイン!!』


チューリップ賞当日の阪神競馬場。一般レースにも関わらず、大歓声と拍手が盛大に飛び交った。第5レース・3歳未勝利戦(芝2000m)。3番人気のリンクロゼリオが残り200mから抜け出し先頭に立つと、そのまま押し切って初勝利を挙げた。


「やっとだ!!」

「遂に見れるぞ!!」


注目の理由を知る観客が次々と声を上げ、SNS等で拡散し始めている。


「………待っとけ恭一、すぐにお前の娘がお前を越える存在になるからな…」


関係者用のスタンドで見守っていた1人の男性、宮崎調教師は空を見詰め、拳に力を入れた。


今年の14勝目。


勝利したリングロゼリオの鞍上は、GIレースに騎乗可能となる通算31勝を達成した「天才の子」・卯月うつき 璃乃りのだった。


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