【更新停止中】葵き女王。

番外編．フェブラリーS（前編）

　2月21日（日曜日）

　快晴だが、まだまだ寒さが漂う東京競馬場。この日は朝早くから沢山の人々が集まり、賑わいを見せていた。

　競馬以外の物、お土産やターフィーショップ、更にグルメも注目だ。折角なので少し紹介していこう。まず東京競馬場の名物と言ったら「大穴ドーナツ」だろう。

　東京競馬場・3階「トーキョーカフェ&ベーカリー」というお店にある、文字通り大きな穴が空いたドーナツだ。店内で手作りで作られているこの品は、焼きたてで生地はふわふわ。文句無しの美味しさを誇る。

　ちなみに、この大穴ドーナツの穴の中にもう1重ドーナツが入っている「本命ドーナツ」というのも存在する。

　その他にも、肉類にカレーやパスタ、デザート類、コンビニ、全国チェーン店など、様々な店が並んでいる。競馬観戦以外にも、グルメ巡りなどを楽しんでみるのも大ありだ。

　そして、今日の東京競馬場のこの賑わい、盛り上がりにはまた別の理由がある。SNSや競馬場内の掲示板、至る所に宣伝されているもの…

「フェブラリーステークス（GI）ダート1600m」

　そう。今日は2021年中央競馬の最初のGIフェブラリーS（ステークス）が開催されるのだ。今年は歴代最高とも言われる好メンバーが集結するという事で、非常に注目が集まっている。

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　既に午前のレースが終わり、お昼休憩の時間帯だ。

「やっぱ東京広いな〜！！」

「何を今更…まぁ璃乃（りの）はあんまりこっち来ないもんね〜」

　早めに休憩を終わらせた2人の女性騎手が、ウィナーズサークルから東京競馬場の広いコースを眺めている。先週の京都記念で接戦を演じた2人、卯月（うつき）璃乃と花火（はなび） 結羅（ゆら）だ。

　今度は璃乃が関東の競馬場にやってきた。今日の東京第10レース・ヒヤシンスステークス（3歳・リステッド）ダート1600mに騎乗するためだ。

　東京競馬場はコースの幅が広く、そして何よりの特徴は芝コースの直線の距離が約525mもあること。そして、残り300mを過ぎたあたりから立ちはだかる高低差2.1mの坂だ。

　フォルテやフレアなど重賞で戦える関西の馬たちはもちろん、騎乗依頼を頂いた馬達と共にいずれは東京競馬場にもたくさん訪れるだろう。

　今のうちにしっかりと経験しておかなくてはならないのだ。

　その後行われたヒヤシンスステークス。璃乃が騎乗する4番人気、ルビールヴァンが好スタートからハナを奪うとそのままハイペースの逃げを打った。直線に入っても脅威の粘りをみせ、1着でゴールするかと思われたが、最後の最後に1番人気・ゴールドスナイパーが後方から末脚を伸ばし、1馬身差を付け差し切り勝ち。ルビールヴァンは惜しくも2着に終わった。

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　15時半前、いよいフェブラリーステークスに出走する16頭の本馬場入場だ。

　観客の大歓声に包まれる東京競馬場。白毛の誘導馬に導かれて、16頭の優駿がターフに姿を現す。

『3枠5番・エルシーブリッツ！！昨年の覇者が連覇を狙います！！鞍上は、川上騎手！！』

　2番人気はフェブラリーSの連覇を狙うエルシーブリッツと川上騎手。最近はGIで3着→5着→3着と惜敗続き。一昨年のマイルCS南部杯、昨年のフェブラリーSの覇者が復活のGI（JpnI）・3勝目を狙う。

『さぁ来ました来ました！！6枠12番・アリス！！6連勝中の1番人気馬！！鞍上には世界的名手、ドゥ・レイ騎手を迎えて7連勝、そしてGI初制覇を狙います！！』

　単勝2.0倍と堂々の1番人気はアリスとドゥ・レイ騎手。ダート戦を6連勝中のこの馬と、世界をまたにかけて活躍する名ジョッキー、ドゥ・レイ騎手とコンビを組みGI初制覇を狙う。

　ちなみに、同期である角宮（かどみや）葵（あおい）も10番人気のグレンラと共に出走する。

　全馬、本馬場入場が終わりゲート裏で輪乗りをしている。その間、ウィナーズサークル付近で見守る璃乃と結羅はそれぞれ勝ち馬を予想している。

「私は復活して欲しいな〜エルシーブリッツに」

「でも流石にアリスには及ばんやろ〜」

「そうだ、葵も応援しなきゃ」

「そうなんだよ！！さっき『頑張れ』って言ったら涼しい顔して『まかせろ』って言ってたよ」

　葵らしいと思いながらゲート付近を見守る。

　スターターがスタート台に向けて歩き始め、間もなくファンファーレだ。

　観客の歓声が段々と大きくなる。いよいよ2021年中央競馬・最初のGIが始まる。

『スターターが壇上に上がりました！！関東GIファンファーレです！！』

　生演奏でファンファーレが流れ始めた。璃乃と結羅の2人も自然と手拍子をしている。

　ファンファーレの音色が東京競馬場を包み込む。鳴り終わると同時にスタンドから大歓声と拍手が飛び交った。

さぁ、いよいよフェブラリーステークスの発走だ！