第5.5話 .レース後

 勝利を収めたフレアと共に、馬場をゆっくりと引き返す。


「ふぅ。おめでと、フレア」


 たてがみを撫で相棒を讃える。レース前は綺麗に整えられていたが、風に当たり続け乱れていた。


 ドッとした歓声がフレアと私を包み込む。より一段とスタンドが沸き上がり、拍手が巻き起こった。


「凄いな。仮にも未勝利戦だよ?これ……」


 重賞レース並の大歓声と拍手に少し驚きながら引き返していたが、これにはもう1つ理由がある事にターフビジョンを見て気付いた。


 タイム : 1分58秒2


「ん……?え、速っ!?」


 乗っていた璃乃でさえ、これ程速いタイムだとは思わなかった。中京2000mの3歳未勝利戦は基本的に、2分過ぎくらいで走る。

 だが、今日のフレアは2分を切ってきた。重賞レースに出てもいい勝負をできる位のタイムだ。


(難しい馬とは言え、なんで今まで勝てなかったのかな……)


と、思うくらいレベルの高いとてつもない走り。今後が物凄く楽しみになったのである。


璃乃りのちゃんありがとう!!よくやったぞ〜フレア〜!!」


 喜びを爆発させる厩務員・吉田よしださんも合流し、一緒に引きあげていく。ちなみに吉田さんも、ターフビジョンを見た時はドン引きしたらしい。


 フレアの能力を信じてたとはいえ、これ程だとは。言葉を失いそうになる。


「おめでとー!」

「ありがと〜!璃乃ちゃ〜ん!」

「フレアァァァァ!」


 観客の祝福の声を聴きながら、検量室前まで戻ってきた。待っていた花火はなび調教師も満面の笑みで出迎えてくれた。


「頑張ったなフレア!璃乃のまくりも良かった!最高や!」


「ありがとうございます!頑張ってくれましたフレアが……!」


「次も頼んだ」と、次走での鞍上を任され、全力で喜びを表情に出す。「次も勝ちます!」と言うと、がっしりと握手を交わし後検量へと向かった。


◇◆


「そうですね、順調でしたらオークスを目標に進めていきます。鞍上はそのままで」


 インタビュアーの質問にテキパキと答えていく花火調教師。少しざわめいている。


卯月うつき騎手は、今日のレースで通算18勝目……。間に合いますでしょうか?」


 少し間を置いた後、静かにだが力強く「そこは彼女を信じています」と答えた。


 もし、ブルーフレアがこのまま順調に勝ち進むとする。そうすると、大目標となるのは牝馬3冠レースの2冠目、東京競馬場で行われるオークス(GI・芝2400m)となる。


 そして、GIレースに騎乗する騎手には、とある条件があるのだ。


──通算勝利数・31勝以上──


 この数字をクリアしなければ騎乗する事も出来ない。


璃乃の通算勝利数は18。


このまま継続騎乗をして、オークスに騎乗には残り13勝を挙げなければならない。


 オークスまでは残り4ヶ月。


 フレアと共に「最高の景色」を見る為の、試練が立ちはだかった。



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