精算の朝(第7回 お題「朝」)

 空が白みはじめた頃、村人たちは申し合わせたとおりに外に集まった。

 緊張でこわばった顔が揃うなか、血まみれで荒い息を吐いている者がいる。

 村人たちは彼に飛びかかり、縛り上げて路上に転がした。

 これが村を震え上がらせた吸血鬼に違いない。こうして日光に晒せばおしまいだ。

 じりじりと、陽光が地上を焦がしてゆく。だが、縛られた男はそのままでいた。

 不意に、誰かの悲鳴が上がる。思わず振り返った村人が、暗がりから伸びてきた腕に首をつかまれ、引きずり込まれる。

 バケモノは吸血鬼ではなかったのだ。

 村人たちは悲鳴を上げて逃げ惑う。路上に転がる男は、自分の前に着地する足どもに噛みついて、その足を止めさせる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る