抱擁(第2回 お題「甘い」)
部屋に入るなり抱きついてきた男からは、うっすらと硝煙の匂いがした。
いつもなら連絡もなく深夜に転がりこんでくるような男ではない。同じく危険な橋を渡る稼業にある女が在宅していたのは偶然だ。
「私がいなかったらどうするつもりだったの?」
「考えてなかった」
女の身体に回す男の腕が、返答の刹那にかすかに震えた。男もそれを隠そうとはしない。
おそらく、よほど撃ちたくない相手を撃たざるをえなかったのだろう。
女は両手で男の頬をはさんで口づけた。あえて目を閉じて、男の表情は見ないでおく。
朝まで、男の気が済むまで甘やかしてやろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます