第2話
その願いは当然と言えば当然だったのかもしれない。
なにしろ宇宙船が壊れているので、帰ろうにも帰れないし、直して帰ったところで、結局また前のような敬われる生活に逆戻りする。
理由としては納得なのだが、初対面の男に居候させてくれというのはいささか意識に欠けているような気がする。
ただ、相手は宇宙人。
もしかしたらこれは向こうの常識なのかも知れなかった。
あんなに頼ってくれとか大口を叩いて、断ることはできない。
いや違う。
一人よりも二人の方がきっとずっと楽しい。
「言っておくけど、うち、女性用のものなんて何一つないから。」
「いや、大丈夫だ。
一人娘なもんで男物は慣れている。
これからよろしく頼む。」
どういう意味かは、聞かなかった。
夜が明け始める。
つまり、僕は学校にいかなければならない。
僕はキッチンに入って、ご飯を作り始める。
もちろん二人分だ。
すでに昨晩のうちに予約をしておいた白米は、ちょうど湯気を上げている。
さらに、冷蔵庫にある数個の卵を使い、スクランブルエッグを作り始めた。
さらに、昨日買っておいたレタスを中心とするカット野菜を皿に乗せると、ちょうどスクランブルエッグも焼き上がる。
自分で言うのも何だが、いつも通り手際良く朝ごはんを完成させた。
「はい、これ食べて。」
「ありがとう、頂くよ。」
もう既に先程までのような涙ぐんだ表情から、凛とした物に再び戻っていた。
僕と彼女はダイニングテーブルに座ると、僕は箸、彼女はフォークとスプーンでご飯を食べ始めた。
彼女は、スプーンですくって、パクっとスクランブルエッグを口に入れる。
「!!」
一度噛んだあと、手が止まった。
「どうした?」
「こんなに美味いものを未だかつて私は食べたことがない。
ケーキより美味いものがこの世にあるとは思いもしなかったよ。
……うちのシェフは一体何してたんだろう。」
女王に立つ人の料理番となると僕なんか比べ物にならない程に優秀そうなもんだが……。
満足してくれたならそれで良いか。
その後、僕も彼女もペロペロっとご飯を食べきり、テレビをつけて僕は準備を続ける。
「これ、昨日の宇宙船じゃない?」
僕が歯を磨きながらテレビを見ていると、ニュース番組は山の上に墜落している宇宙船を取り上げていた。
『おそらく政府に回収されるということで……。』
「いいのか?
回収されてしまうぞ。」
しかし、彼女の表情は変わらない。
「ああ、どうでもいいよ。
こんなの作ろうと思ったらすぐにできる。
地球のものでも。
あれを作ったのも私だからな。」
そりゃあ、期待も尊敬もされるだろと思いながら、僕は家を出た。
今度、作り方でも教えてもらおうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます