第3話

 僕の通う学校、公立九頭竜高等学校は、そこそこの進学校。

制服は男子は学ラン、女子はエンジ色のブレザーで、制服が可愛いと評判だ。

僕にとっては近くにあるのが決め手で、家から自転車で十分程度のところにある。


僕は先輩と後輩に挟まれる二年だ。


 僕が始業時間の十五分前、八時二十五分に教室に入ると、大多数の生徒は既におり、皆が揃って同じ話をしていた。


『宇宙船、見た人いる?』


『UFOってホントに在るんだな。』


朝のトップニュースで取り上げられていたからだろうか、既にみんなには周知の事実だったようだ。


僕は、「それどころか、宇宙人が家にいるんだけどね。」とでも言ってしまいたいところだが、騒ぎになるため、自重した。


 席についた僕の近くには、一人目の友人がやってくる。


糸魚川いといがわ 博己ひろき

野球部所属、坊主で、好青年という言葉が似合う爽やかな風貌をしている。


苦手なことは本人曰く音楽で、それはもう絶世の音痴らしい。


聞かせてくれたことはないのでよく知らないのだが。


「宇宙人、見たか〜?

亮朔のことだし深夜でも見に行ってそうだけどな。」


まさに図星なのだが、ここはそう感づかれないように振る舞う。


「いいや、見てない。

残念ながら、今朝のニュースで初めて知ったよ。」


博己は、怪しむ目線を僕に送る。


僕は、よく学校でオカルト系のTwitterをよく見ているからだろう。


「あの山、亮朔の家の近所だろ、音とかも聞こえなかったのか?


聞こえてたら間違いなく行ってるだろ。

博己のことだし。」


僕は一体どう思われているんだ?


「何しろ、爆睡してたからな。」


「宇宙人とか興味あるんだろ?

会えたら良かったのになー。」


「ああ、できることなら話してみたかったよ。」


話すとかじゃなくてもう同居しているんだが。

いつも通り駄弁っていると、ニコニコ笑顔で、二人目の友人が登校してきた。


「おっはよー!」


梶屋敷かじやしき 美宙みそら


少し色の薄い目と肩甲骨くらいにかかるポニーテールをした、太陽のように輝く大きな二重の目に、ハムスターのような小さな鼻をもつ可愛らしい女子だ。


告白に成功した男子は一人もおらず、難攻不落の絶対要塞と、クラスでは呼ばれている。

本人曰く、男女の友情は成立する派らしい。


「宇宙船、見に行こーよ!」


いきなりこれか。

彼女は行動力の塊(深夜に宇宙船を見に行った僕もそうかもしれない)で、突拍子もないことをどんどん言って来る。


「放課後にはとっくに回収されてるだろ。」


冷静に博己は突っこむ。


すると教室に先生が、入って来た。

『朝のホームルーム、始まるぞ〜。』


皆は席について話を聞く体制を取り始めた。





 「はぁ~、疲れた。」


全ての日課を終え、今日は部活動がない日、僕たち三人は帰路についていた。


 昼休みに、一度宇宙船が降り立った山に足を運ぼうという話もあったが、Twitterの投稿で、山の周辺に規制線が張られていたのと、帰りのホームルームで、先生に釘を差されたので辞めておいた。


というわけで、いつも通りの帰り道だ。


ダラダラ喋りながら、もうあと数分で家に着こうとしているとき、美宙は僕たちに向かって笑顔で提案をしてくる。


「博己の家で遊ぼうよ?

な、どーせお前ら彼女もいないんだろ〜、だ、か、ら、遊ぼうぜ!」


…………


「お前も彼氏いないだろ!」


「あたしはじゃなくて、だから。

博己さん、残念でした〜。」


博己は傷ついた顔をしたあと、口を開く。


「で、亮朔の家は行けるのか?

いや、行けるか、一人暮らしだろ。」


正直なところ、宇宙人が家にいるとはバレたくなかったが、変に断って勘繰られるのも困る。


僕は皆を連れて家まで着いた後、玄関の前で少し待ってもらうことにした。

ブロッサムさんに事情を話して、部屋の中で待機してもらうためだ。

バレなきゃ何も問題ない。


「ちょっと待ってて。」


美宙はいたずらっぽい笑顔を向ける。


「そうかそうか、亮朔も高校生だもんね、隠したい物もあるよね。」


首を振り向く。


「うるせえ。

母親か。」


僕は再び正面を見て、ガチャリとドアを開けた瞬間、ブロッサムさんの姿が見えた。

見えてしまった。


「「同棲!?」」

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