第19話 鳳梨 view
私は家を出た。カナリアさんからの話では"彼”が出てきてしまったとのこと。そのことからもやはり"彼”は生きていると思って間違いないのだろう。なぜ、カナリアを助けるような素振りを見せたのは疑問だが、時期に奴らも報復を仕掛けてくる。
絶対に個々の生徒には傷ひとつつけさせてはならない。
決意とともにドアを開けた。
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部屋を出て校門の方へと向かう。そこには華蓮先生と太閤君がいた。
「よっ、聞いたぜ。うちに潜入してたノバドの奴を殺ったんだって?」
片手を上げ、陽気に話すのが素の彼だ。チャラいという表現があうと思う。けれど、そんなのが演技かと思うくらい魔法の能力、頭のキレともにずば抜けている。
「あなたに来てほしいなんて一言も伝えてませんが?」
睨みつけてそのように言い放つ。
「物騒だな。せっかく助けてやろうってのによ」
「では、答える必要はもうありませんね」
「つーことは、間違いないってことだな。鳳梨」
「気安く名前で呼ばないで貰えます?」
「あー、いちいち毒を吐くな。…んで、まじで灰にしちまったのか今年の一年が」
「ええ…その通りです。彼らはこちらの領域に潜入していたということはありますが必ず報復行為に出てくるでしょう。数はそこまでではないと思いますがこれ以上風評被害を広めないためにもここで叩いておきたいところです」
「了解。んじゃ勝手に手助けするわ」
太閤はそう言い捨て森へとはいっていってしまった。彼なりにうまくやってくれるので心配はしていない。
「先生。生徒はどうしますか?」
「偵察班によれば報復の数は大した事なさそうだ。報告では二人とのこと。どんな魔法かが分からないが、見つけさえすればそこまでのことはないと思う」
「ということは見失ったんですね?」
鋭く先生に突っ込む。ある意味非難めいた発言だ。
「ああ、面目ない。使い魔で追跡してたがどれもやられちまった」
「でも、先生の索敵をかわすなら相当でしょうか?」
「ああ…」
会話した瞬間に怪物が現れた。大きく雄叫びを発し、鋭い威嚇を私達に発する。
顔は馬。カラダは人間のまさしく怪物だ。
魔法で作られた魔物だ。
「これくらいなら問題ないです。……(ソイント)」
杖を怪物に突き出し、思い描いたことを具現化すると怪物の胸に穴が穿ちそこに倒れた。
戦闘態勢を一旦緩めた。
「さすが。武田の秘術だな」
「ええ……こういうとこしかうちは使い道がないので…」
「いや…非難するつもりはなかったんだ…すまん」
「いえ…気にしてません」
この魔法自体は武田の秘術と目され、魔法界に武田の名前を知らしめたものであるが、殺戮以外にあまり使い所がないことが私のコンプレックスではある。力だけでのしあがってきたこの魔法が好きになれない。
その後次々と現れる怪物を仕留めていった。正直、雑魚キャラと言わざる負えない動きはのろいし、ビジュアルの怖さくらいしかない。
「なぁ、絶対に術者が近くにいるんだと思うんだが、俺はそっちに行ってもいいか?」
「! どこにいるか分かるのですか?」
「ああ…。だから、ここは任せてもいいか?」
彼の提案に一瞬頷きかけて、逡巡した。彼の実力を見れば特に私と遜色はない。だが、術者の能力が未知数だ。
「いや、その必要はないよ。さすがにそこまで生徒にやらせる訳にはいかない」
後ろから華蓮先生が戻ってきた。先生には敵の漏れがないか見てもらっていた。
有無を言わさず、森の中へと踏み込んでいった。
「……多分先生なら大丈夫です。ここをなんとしても死守しましょう」
「おう!」
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