第13話

 その後のことは薄っすらとしか覚えていない。明らかに力不足でアタックをくらい耐えられずに意識を失ったようだ。

 白い天井が見えるということは多分そういうことなんだろう。横を見てみるとカーテンで仕切りが設けられていることからおそらく保健室的なところだと推測する。


「目覚めましたね…」


 声の方へ視線を動かす。生徒会長が丸椅子に座っていた。


「申し訳ございません。このようなことになってしまって…伝統とはいえ止められなかった私の責任です」


 そういって頭を下げる会長。謝られたことよりも、しだれ落ちる髪に見とれてしまった。


「……っと。会長が気にすることじゃないと思います。結局、俺自身も魔法に対してみんなよりはできているというおごりが心の何処かであったと思いますし。そういう意味では俺にとっていいお灸になったとおもいます」


 くすっと会長は笑みを浮かべる。

 俺は笑われたと少ししょげる気持ちになった。


「言葉と顔が合ってませんよ。めちゃくちゃ悔しいって顔してる」

「マジっすか…」


 隠せてるつもりだったが、だめだったようだ。


「…………」

「へ?なんかいいました」


 会長が笑みを浮かべて口を動かしたが、聞き取れなかった。


「なんでもないよっ!」


 肩を軽く叩かれて先輩は立ち上がった。


「誠くんはそのままでいいよ。じゃあ」

「? ああ…はい…?」


 結局、よく分からなかった。生徒会長なのだから皆の気配りという意味でも色々あるのだろうと思った。




 ーーーーーーーーーーーーー




 次の日。校門をくぐろうとしたところでまたもや塩木先輩に呼び止められた。


「また伝統すか?」

「いや。君がしょげてないかと思ってな」

「……まぁ、してないとは言えません。自分も心の底ではあなたに勝てると思っていたみたいなので」


 正直に答えた。ここで取り繕っても仕方がない。ルールがあるとはいえ負けは負け。素直にその事実は受け入れてこれからどうしようか考えていたところにこれでは嫌味に感じ取られても仕方がないだろう。


「でも、俺は逆に驚きだった。伝統とはいえ相手は一年。しかも、魔法貴族ではない一般家庭…正直、魔法に関しては素人だと思っていたからな。一瞬でけりがつくと思っていた。でも、実際はかなり手こずった…。本気を出さなければいけないほどに。むしろ俺のほうが実力不足を痛感させられた」

「でもそれは、先輩が俺のこと知らなかっただけで本気同士だったらもちろん俺は負けてたわけじゃないすか」


 慰めに来たんだろうが結局は俺が弱いと言われているのは変わらない。そのことをほじくり返されるのがとてつもなく気に食わない。それこそ勝者の優越だろう。


「素直に謝りましょう。塩木くん」

「っっ! 会長…」


 後ろから武田会長が助け舟を出してきた。ちょうど校門の方に出てきたみたいだった。

 少し塩木先輩が会長を苦虫を噛み潰したような顔で見ると俺の方に向き直り頭を下げた。


「お前のことを生徒会入を反対してすまなかった」

「!!」


 まさか頭を下げるなんて思ってなかった。驚き、一歩後退りしてしまう。


「ただ分かって欲しいのは、塩木くんは二年の中で三本の中に入るから。その人に本気にさせたことはかなり誠くんもすごいってことだよ」

「おう…。それが言いたかった…」

「口下手なのは相変わらずだね」


 武田先輩がニカッと笑みを作る。それに照れる塩木先輩が真面目だということも同時に理解した。


「改めて、歓迎するよ幹久」


 先輩が手を差し出した。


「はい…こちらこそ」


 俺はその手を取った。

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