第11話
放課後になってしまったー。
先生からの連絡事項もなく早々に解散となる。
みんなからの視線もあり、渋々生徒会室へと足を運ぶ。気持ちが重い…。できることならばバックレてやりたい。
生徒会室へは階段を上がった最上階にある。生徒の代表ということで、教室よりも広いスペースが与えられており、地図からしても広そうな形をしていた。
重い足取りで歩を進める。
「どうしてですか?! あんな名門でもないひよっこを生徒会入りさせるなんてどうかしている!」
怒号が、聞こえ見えない位置で耳を傾けることにした。幸い、避難時の扉があることで死角になっている。
「彼は私が見たところとても優秀だよ。今はまだかもしれないけど今後絶対に世界に影響を及ぼすような魔法使いになる。その人に目をかけておくのは後々こちらにとってメリットになると思わないかい?」
「それは、あなたの見た目だ!感想だ! 生徒会は今の能力が優れた者がなるべきだ。知名度もなく、魔法力も未知数で、実績もない。そんな者を将来性で取れという方がリスキーすぎるでしょ?!」
「でも、生徒会の人選は私に一任されるでしょう?」
「くっ……いいんですね。俺は忠告しましたよ」
男子生徒は吐き捨てるようにして生徒会室へと戻っていった。それを見送ったあと、覗き込む俺に対してにっこり微笑む生徒会長の姿があった。
生徒会長には元々バレていたようだ。
「こんちは…」
「こんにちは。誠くん。ということで生徒会庶務をお願いします」
「はぁ…。生徒会長に任命権があるということは俺には拒否権はないということですよね」
「いや、あるけど…君にはないかな。ま、とにかくそばにおいて置きたいんだよ。前みたいになってもすぐに行けるとは限らないから……ね?」
要するに監視のため…ということだった。
「いや、だから自分は反逆したものの生まれ変わりかもしれないが、自我や思想までそいつと一緒じゃない。だから、あまりに警戒されるのは迷惑です。…生徒会にはめんどいので入りたくもありませんし」
ここでは、周りの生徒たちはいない。ここでなら、思いっきりはっきりと言葉を口にできる。口にしなければ伝わらないこともあるだろう。ここはガツンと言うことにする。
「言ったでしょう? 拒否権はないって…」
そう言いながら生徒会長は俺の手を取った。されるがままに生徒会室へと連行される。
そうされるがままなのだ。身動きが取れない…。
「みんなー。新入生を連れてきたよー」
生徒会長の一言で皆の視線がこちらに向く。表情は様々だ。どんな人かワクワクしているもの、少し警戒している者、明らかに嫌ってる者。
「紹介しますね。幹久誠くん。私が見込んでスカウトしたんだよ」
「おお…。生徒会長がヘッドハンティングしてくるなんて…」
「会長の下で働きたい下心のあるやつなんてごまんといるのに…なぜこいつ? 怪しい…まさか、鳳梨さまはこいつに脅されて……許すまじ…」
「ふん…」
回答は三者三様だ。俺は断固願い下げだが、困ったことに身体が言うことを聞かない…。しかもなぜか俺が悪いことになってるし…。
「別に自分から入りたいわけじゃないんだが…」
「そこをなんとか…」
「うえっ…」
なんと拒否ろうとしたらまさかのみんなの前で生徒会長が頭を下げた。
「あの生徒会長の頭を下げさせるなんて何者…?」
「はっ?! まさか、そこまで鳳梨さまをコケにして…こいつ…いつか殺すわ…」
「……」
またしても三者三様の返事。穏やかじゃない雰囲気に肝が冷えた。
「お願いします!」
なおも頭を下げてくる生徒会長に身の危険すら感じてしまう。
「わ、わかりましたから…顔を上げてください…」
「ほんとー! ありがとう!!」
手を取られぶんぶんと縦に振られる。会長の策略にハマったわけだが、ここは会長を味方につけなければ俺が殺されるところだったので仕方がない。相手は上級生。ある程度魔法ができると見て間違いない。
ここで魔法力が見えればいいが、目が変わるのを感じ取られるやもしれない。貴族…というか上級魔法使いの家庭では、コバルトという人物は禁忌に値するほどの扱いだそうだからむやみやたらには動けない…。
ここは耐えろ…。まだ機ではない…。
俺は歯を食いしばり「みなさん…よろしくお願いします」と頭を下げた。
「おおう! よろしくー」
「会長がおっしゃるのでしかたなくよ…ふん」
「……ちっ」
やはり回答は三者三様だ。
ああ…俺もそいつを恨みたい……。
そのまま手までも脱力した…。
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