第10話

 とりあえず、明日を迎えられたことを神に感謝しようと思う。ありがたや~。

 朝日を見ながら安堵した。結局、疲れていたのか寝てしまい。起きた瞬間は冷や汗が出たものだったが、昨日と同じ部屋で安心した。

 今日から本格的に魔法の授業がはじまる。よしと気合を入れ、ベッドから出た。


 ーーーーーーーーー


 カナリアはもうすでに部屋にいなかった。遅刻する距離ではないものの、少し余裕を持って出ることにした。


「よお、はよーす」

「おう、はよ」


 後ろから爽が声をかけてきた。


「今日から授業だな…。ワクワクもあるけど、俺頭悪りいから不安だなあ…」

「確かに頭を使うが、魔法自体は理論が確立したものではないから結局はアレンジ次第という感じになると思う」

「お前の言い方がわかんねぇ。つまりなんだよ?」

「つまり、体で覚える。だと思う。最終的には…な」


 そんなことを話し合いながら教室のドアをくぐった。

 席に座り、周りを見渡す。生徒会長は監視役は私だけではないと言っていた。となると、生徒に紛れ込んでいる可能性は高い。

 見回してみるが、特に目を合う奴はいない。


(気にし過ぎが…)


 監視役とはいえ生徒会長の口ぶりでは俺に害をあだなすものではなかったようなので過度になるのをやめた。

 そんなことをしていると牧先生が入ってきた。


「今日のHRは特にない。早速だが、皆の魔法適正を測ろうと思う。全員競技場にでろ。男子はここで着替えてから来い。女子は今から更衣室に案内する。ついて来い」


 先生の指示で着替、ぞろぞろと移動することに。あんまし校内を知らないため、わかりそうなやつに付いていくことにして、競技場に着いた。実は外観自体は登校の際に見えてはいたので大体の場所自体は分かっていたものの、教室からのアプローチ方法が分からなかった。


「ほぉ…」


 初めて中に入ったが、競技場というより闘技場に近いかもしれない。真ん中に広場があり、それを取り囲むように観客席がある。魔法を使うためか広場と観客席の間にはフィルムのような透明な膜が張られていた。

 ここに立つと観客から一斉に上から見下される格好になる。今は客がいないがもういたら恥ずかしさMAXだろう。


「やべえな…」


 隣りにいた爽も呟く。

 やがて、向こう側から先生と女性陣が出てきた。


「よし、とりあえず点呼する。一番…」


 移動したということでいるかどうかの確認。さすがに高校生だし、全員揃っていた。


「じゃあ、一番からこれに乗って力を込めろ」


 一見は体重計のようなものだ。金属のような人一人乗れるくらいの台に、計測台のような数値のある機器がある。違うのはその横にパソコン台ほどの計器が追加されていた。

 一番の生徒が台に立つ。両手首に計器をつけられた。


「じゃあ、力を込めろ」

「えっと…力を込めるとは…どうしたら…いいのでしょうか?」

「なんでもいい。とにかく力を入れてみろ」


 一番の生徒は先生の意図が分からず、聞くものの曖昧な回答が変えるだけ。

 とにかく、力を入れるということに従い足や腕などに力を入れているようだ。


「限界か? よし、いいぞ。(器具を外し)次、2番…」


 そうやって次々に呼ばれていく、皆一様に力を入れてみたものの、これがどう魔法適正に関わるのか分からないみたいだ。


「よし、45番…幹久」

「は、はい」


 自分の番が呼ばれ、台に立つ。両手首に機器をつけられた。


「よし、力を入れてみろ」


 俺にも真意は分からない…が、魔法の発動はイメージが真意だと思っている。だからこそ、力というものの筋肉を隆起させるような力ではなく、魔法を力として具現化させることと考えた。

 故に、力というよりは魔法を電気のような形でこの機器に流し込むのをイメージした。


「ふむ…まぁ、いいだろう。次、…」


 別の機器の画面を見ていた牧先生が俺の方を見て少し笑った。

 多分、お眼鏡にかなったんだと思う。

 そんなこんなで進んでいった。


「結局何だったんだろうな…」


 爽は首を傾げるばかりだった。


 ーーーーーーーーーーーーー


 今日に関して魔法の授業はこれだけで他は普通の授業だった。今は昼休みだ。


「なぁ、幹久。学食行かね? 初めてだし見ときたい」

「ああ、そうだな」


 特に購買か食堂とか考えていなかった俺は爽の提案を受け入れることに…。

 席を立とうとしたところで、おい生徒会長だぞと声が聞こえた。俺たちには関係ない話だと思いそのまま爽と教室を出ようとすると…。


「幹久誠くんいるー?」


 まさに俺に名前…。名前が聞こえた途端、体がビクッと震えた。


(絶対にいいことない……)


 とっさに無視を選択し、食堂に行こうとする…が。


「あ、いたー」


 見つけられてしまう。くそ。絶対いいことないぞ…これ。


「あ、先輩…。ちわっす…何か用すか…?」


 まるで今気づいたかのように挨拶する。話しぶりにやめてほしいいんですけど的な感じを出す。


「実はお話したいことがあるんだけどぉー。ちょっとここじゃあアレだから…。生徒会室に来てくれなぁい?」


 語尾を上げつつ、生徒会室へお誘いされる。周りからこそこそ声が聞こえるが、あえて無視。気にしてはならない…。実際、生徒会長とはなにもないのだから堂々としていればいいのだ…うん。


「ちょっと学食行くんです。今は無理ですかねぇ…」


 なるべく、オブラートに断りを入れる。ここで単純に嫌だといえばそれこそ敵を作ってしまいかねない。一応、みんなと同じように生徒会長を尊敬しているというていでいかないと…。


「うん、じゃあ放課後待ってるから。よろしくー」

「うぇ!? ちょっと!」


 生徒会長は軽い肩タッチで軽快に去っていった…。めちゃめちゃニコニコ顔で。

 一人取り残される俺。


「おい。お前。生徒会長とどういう関係だ?」


 爽から睨みをきかせた顔で聞かれた。


「い、いや。俺も昨日少し話しただけなんだが…」


 理不尽だ。これは本当に間違ってない…。間違っていないのだが、信じてもらえる感じが全くない。


「ともかく放課後いけよー。じゃないと他のやつから殺されるかもなー。生徒会長はファンクラブもあるくらいモテるから」

「まじ…か……」


 学校生活…。平凡に過ごしたかった。いや、魔法は当然強くなりたくてここに入れたのは願ったり叶ったりだ。だが、人間関係で敵は作りたくなかった。


「はぁ…」


 ため息を付きながらくらい昼飯になった。爽に根掘り葉掘りまるで尋問のように生徒会長との関係を聞かれるものの、まるで答えられず。不信感は募るばかり…。

 ああ…理不尽だ…。

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