第9話
「死んで」
全身が青ざめる。それほどの殺気を放っていた。一瞬で死を覚悟させられる。
「どうして…?」
「それは、あなた自身が分かってるんじゃないの?じゃなくて…あなたの中にいる存在が…」
カナリアはそう言い放つとどこからともなく剣を取り出した。その剣は夕日に照らされてとても眩しかった。
「君も知ってるのか…!?」
「その目が証拠じゃない…忌々しい。でも良かったわ今のコバルトは雑魚そうで…」
一瞬の出来事に反応できない。瞬間的に間合いを詰められ、その瞬間がスローに感じる…が、身動きすら取れない。
(くっ、やられる)
とっさに目を瞑った。今の俺では確かに死を覚悟するしか方法がなかった。
その瞬間ガキっと剣が交わる音がした。
目を開くとそこに生徒会長がいた。
「ふぅ…なんとか間に合いました」
「せ、生徒会長…?」
明らかにだめな間合いだったのにと疑問に思うが、今は聞いていられる状況ではなかった。
「くっ…」
カナリアは生徒会長を睨みつけた。よほど嫌な相手だったのだろうか。
「あなたは私と同じく監視役だったはずよ。そっち側の要求を汲んでそうしたのにいきなり抹殺はどうなの? これを抗議としてあっち側に告ってもいいんだよ」
生徒会長がなだめるとカナリアはあっさり剣を収めた。それはカナリアにとって困るのだろう。
「あなたがそっちの監視役だなんて分が悪いと思っただけよ。実力差は把握しているわ、日本の
「あら、思ったより聞き分けが良くて助かるわ。基本わたしたちは同盟関係ですものね」
生徒会長は笑顔で返した。さっきまでのピリピリした感じが霧散していく。
「さて…説明が必要そうにしている人がいるけど、君をもう巻き込んでいるわけだし一応話しておく?」
生徒会長がカナリアに尋ねる。
「そうね」
カナリアが同調する。
「わたしたちはあなたの監視役としてここにいるわ。で、この人が日本の監視役で私が欧州支部の監視役ってわけ」
「一応、君は先祖返りってこともあって危険視した魔法協会が道を踏み外さないように監視役をつけようってなって指名されたのが私。それだけで良かったんだけど、欧州支部だけは日本では不安ということで彼女が来たというわけ」
俺はまたかと落胆した。そもそも危険分子と言われたのもつい先程なのにそこまで囲まれると気が疲れる。
「そもそも、俺はそんなすごい魔法は使えないぞ。そんなにやばいのかよ…」
ヤバイヤバイとは言われたものの、自分自体は大規模な魔法を使えるわけじゃない。それこそ漫画のような都市を巻き込むような魔法を使えるやつが本来危険視されるべきと思うが…。
「それは違う。君はその生まれかわりってだけで危険な存在なの。この世界にはまだ、魔法で世界を支配しようと考えている組織がたくさんある。その人たちにとって君は、君一人だけでその組織をまとめあげられるそれだけの象徴になれる存在なの。君は。だからこそ力がないからっていうのは問題じゃない」
カナリアが真剣な眼差しでそう言い放つ。少し怒気も籠もっていたその言葉には、面食らった。
つまり、俺がもしそういった勢力に拉致られでもすれば、今までの秩序が崩壊するということだろう。
「だから、君はそういった組織に捕まらないように監視されている。でも、その細かい扱いに関しては日本と欧州・米では異なるというわけ」
「わたしは本国からどうしてもということであればその存在をデリートしてもいいと命じられているわ。そうでしょう。一人の命と世界の秩序を天秤にかけたらどうなるかなんて明らかよね?」
「その点日本は最大限君を守るという方向で行きますのでご安心ください。あえて言わないでおくけど、そのためのセーフティーは私以外にもたくさんあるので」
笑顔の生徒会長とクールなカナリア。要はもし敵に俺が渡されそうになった場合は最悪殺してもいい…がヨーロッパ連合・アメリカ側。日本は、そもそもそうならないように守りを頑丈にしていきますという感じか…。
どちらも懸念していることは共通しているし、世界の秩序なんて考えたら当然そうなるよなという気持ちもわかる…が。
「とりあえず、まだ殺すような切羽詰まった状況じゃないだろう…。死ぬのはまだできない…」
ここで、カナリアの死んでに返答した。もうすでに転生している身でもう一度が通じるとは思えない。故に全力で拒否らせてもらう。
「確かにそうだけど、自発的に死んでくれるなら楽できていいと思っただけよ」
「いやいや殺気ヤバかったでしょ?! 俺に思いっきり切りかかったでしょ?!」
「なに?じゃあ、殺されたい?」
また急に剣が現れた。
「まぁまぁ、とにかく私も監視してるからここは落ち着いて。ね?」
再び生徒会長が間に入り、事なきを得た。しかし、隣で生活するのは変わらなかった。とりあえず、連合側の意見でそうなったとのこと。そればかりは生徒会長様であろうとも曲げられないということで、ベッドで横になりながらも恐怖心で眠れなかった。
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