第8話
ロビーに案内されると新入生たちがいた。
「新入生の皆さん。ここ、オーフェン学園へのご入学おめでとうございます。自分はここの寮長をしております。太閤 宗介と申します。よろしくお願いします」
太閤先輩が頭を下げる。印象としては、キッチリしていると言っていいだろう。私服とはいえ、カッチリした感じだ。
順に寮でのある程度のルールを教わった。やはり、基本は男女別々で女子の領域がありそちらには踏み入ってはいけないとのこと。
「あとは迷惑を起こさなければ自由にしてもらって構わない。当たり前だが、学外での魔法の使用は絶対厳禁だ。以上」
太閤が言い放ち解散となった。もうすでに新入生の中ではいくつかグループができており仲良く食堂などに向かう姿がちらちら目立っていた。
「おっす。食堂行かね?」
澤井がひょこっと顔を出してきた。
「ああ」
話せる人がいるというのは安心する。二人で移動することにした。
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席を取り、食事を摂る。寮長怖くなくてー、とか先生やばいよなーという他愛のない話をしながら…。
「けど、魔法なんて言われるけど実感湧かないよな…出せる気がしないんだが…」
「どうだろうな。俺は気づいたらできてたから感覚的なことになるんかなぁ…」
「じゃあ、お前は魔法が存在するって知ってたのか…。何?親が使えたとか?」
「まぁ、そんなとこ」
「えー!?じ、じゃあかなりのお家柄だったり……?」
「それはない。魔法以外は普通の一般家庭だった」
前世の感覚とすり合わせれば魔法以外はごく普通だったと思う。豪華なお屋敷に住んでたわけじゃないし、親は朝家を出て夕方帰ってくるごく普通の家庭だ。
「じゃあさじゃあさ、すんげぇ魔法とかつかえんの?」
「俺は親から基礎的なことしか教わらなかった。というか教えられないと断られた。だから、そんな都市を破壊するようなとか大規模な魔法はできない」
「そうなんか…。はは…俺にも魔法使えるかね?」
どうやら、ただ不安なだけのようだ。俺も同調させられたかのように苦笑し「お前次第だ」と返した。
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魔法はそれ自体すげえと思っている。前世ではできなかったことだ。それが使える使えないだけで人間の優劣がつくと思っている。
「でも、アニメの主人公みたいなのはないんだよな……」
部屋に戻り、ベッドに仰向けになり自問する。
(そのためにこの学園に入ったんだ…。ここからまた努力するだけだ)
頭を整理し、風呂でも入るかと扉をあけた。
「え……?」
「?…あ…」
このときは時が止まったかのように感じた。
しかし、頭のエンジンを入れ直し思いっきり逆回転して扉を締めた。
「おおおわ、悪い!」
扉の向こうにいた彼女に謝る。
「………いいわ…」
こもった声が聞こえた。その言葉を聞いた瞬間安堵感でいっぱいになった。
「本当に悪い。かわりになんか一つ言う事聞くから」
申し訳ない気持ちから、何か釣り合うものはないかとそう提案した。
「そう…。考えとく…。で、そろそろどいてくれない?」
「わ、悪い!」
扉にもたれていたせいで出られないようにしてしまったようだ。
そして、着替えたカナリアが外に出てきた。ラフな格好に思わずドキッとした。ただ、今は許してもらわなければならない。
「改めてすまなかった。謝る…」
ここは素直になるしかない。とにかく頭を下げた。
「……」
「……」
お互いに沈黙が続く。
ここで頭を上げる訳にはいかない。しかもここで過ごす同居人だ。ここで関係がこじれるとずっと気まずいままになってしまう。
「はぁ…。じゃあ、一つ言うこと聞いてね」
「ああ…。俺にできることなら」
頭を上げ、救われた気がしホット安堵感が満たされる。
「死んで」
「え?」
一気に闇に落とされた気がした。
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