第5話 入学
魔法を学べるのは公式には知られていないと言うことが分かったのは、6歳の時だった。てっきり魔法は街に溢れていてみんなが魔法を使った生活をしていると思っていた。
ここで父親には内緒にせよと言われたのはそのためということを悟った。
そんな中で幼少期を過ごし、気づけば高校生になった。幼少期は普通の人間と言っては差別化もしれないが、わかりやすくそのように伝えることにする。それでも、魔法世界に憧れていた俺は見えないところで修行していた。
そして、父親からは急に「ここに入学しろ」と渡されたのは地図しかないチラシだった。
「ここみたいなんだけどな…」
魔法の修行は父親の指導でちょっとは良くなったと思う。地水火風の属性に加えて光闇の属性があることを知りそちらの修行も進めている。
今いるところは、校門らしきところのまえだ。
両親から送り出され、山奥のこの…『オーフェン学園』に入学することになった。
「新入生ですね。ご入学おめでとうございます。講堂はこちらになります」
校門のど真ん中で突っ立っていたせいだろう。ここの制服に身を包んだ女生徒が声をかけてきた。
周りの生徒が俺たちを迂回する形で通り過ぎていく。とても不思議な光景を見るかのようにこちらを見ながら。
「申し遅れました。私、オーフェン学園の生徒会長しております。
「どうも。
「私こそごめんなさい。あなたを勝手に迷ってると思いこんでしまったみたいです」
「いえ、そのおかげで話しかけていただいたので光栄です。では」
俺はどちらかといえば陰キャの部類に入ると自己分析している。今まで魔法の修行ばかりしていたせいか、他人と話すというのがキツイと思うようになってしまった。
故に足早にここを去った。周囲からの視線も痛かったし、時折「あんな奴が…」といった黒い言葉も耳に入り嫌な気分にもなった。それを察して誤ってくれた部分もあるのかと邪推したが、さすがにないと頭を降った。
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講堂は入学式さながらで赤のカーベットがしかれ、華やかな花が添えられまさにきらびやかな雰囲気を醸し出している。
席は自由だそうでなるべく目立たないように後ろに座った。
ため息で気持ちをリセットした後、周りを見渡した。
制服に関してはさすがに校則にて指定されたものがあるが、それ以外に関しては制限がない。そのため髪型などはある程度自由にしているものや、靴も思い思いのものを履いていた。
俺は特に見た目にはこだわらないので特に何もしていないむしろ寝癖が治りきってない部分があるほどだ。
でも、それでいい。下手に金髪なんかで目立ちたくはなかった。もちろんそういうやつを悪く言うつもりもない。ご自由にどうぞというやつだ。
入学式は滞りなく終了。こんなとこでサプライズなんかはむしろ期待していない。先程会った生徒会長も登壇し、挨拶していた。
「では、新入生は張り出された掲示板を見て自身の教室に入るように」
複数箇所に移動式の掲示板が張り出され、そこに一年一組から六組で名簿が張り出されていた。
生徒が群がっていたので時間をおいて見に行く。
「六組か…」
単なるクラス分けだ。特に感動はない。むしろ、いじめられないかとか人間関係の方に不安があった。
そのまま指示通りクラスの方へ向かった。
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教室は扇形のスペースになっており、教壇を囲むように長机と椅子が配置されていた。広さもかなりあり、生徒の数に対して余裕のある形になっていた。そのためか、席の指定はなかった。
「お、六組?」
後ろの方でつまらなそうにしていると話しかけられた。話しかけられた瞬間、肩がビクってなったが、すぐに立て直し首を縦に振った。
「よかったー。なんか、喋られるやつがいなくて不安だったんだ…俺は澤井
「お、俺は幹久 誠。こちらこそ」
お互いに握手を交わした。爽はニコニコしている。その陽キャオーラが俺にはとても眩しかった。
「でも、俺馬鹿でさ…。高校受験に失敗しちゃったのになんかここの合格通知がきて。親に高校くらいは出た方がいいって言われてきたんだけど。誠はどうなん?」
「俺も似たようなもんだ…」
念のため魔法が使いたくて入学したことは伏せておく。一応嘘じゃない発言だと俺自身思っている。父親からは事前説明はなかったからな。でも、俺が魔法が使いたいのは知ってたからなんとなく予想できていたけど…。
「おい、席につけー」
入ってきたのはブロンドの髪にシュッとした女性だった。いかにも先生という白を基調とした服に身を包んでいた。もしかしたら、式があったからかもとも思ったが。
「私がここの担任になる牧
この発言による反応は三者三様だ。えっ!と驚くやつ。特に驚かないやつ。虚だろーと信じてないやつなどなど。俺はどちらかといえば驚かないほうだ。
「ここは、魔法を学び正しく扱ってもらうための学校だ。逆に言えば、悪用するやつを管理するためという意味もある。そこを肝に銘じるように。不正使用はことによれば死を意味するからな!」
最後の発言に教室は凍りついた。
死というワードがかなりのパワーワードであったのと華蓮先生が教壇の机をはたいただけで粉々に崩れたからだ。
「じゃ、説明終わり。あとは、事務連絡だけだ。ええと…順番に呼ぶからプリントを受け取れー」
あいうえお順に呼ばれていく。どうやら、寮の部屋番号が記載されているらしい。
「次ー。幹久ー」
先生はやる気がないのか気だるそうにしていた。先程のこともあり、事務作業は苦手っぽい。
「ほい。あと、これ終わったらついて来い」
「え?」
イレギュラー発言につい聞き返した。
「いいから」
先生はそれだけいうと次の人を呼んだ。
………。
「うし、これで終わりだなー。ったく、こういうのは向かんな。ってことで今日は終わりー。決められた寮の部屋に入り明日からの授業に備えることー。今後の連絡は明日配布する学園支給のデバイスで行うので各自こまめに確認するように。以上解散!」
そう吐き捨て華蓮先生は教室から出ていった。階段を上がり俺の席に向かってきた。
「よし。んじゃ行くぞ」
「は、はあ…」
それだけ言い残し、再びあるき出した。
「お前、なんかしたの?」
「いや? 見に覚えがない…」
「と、とりあえずいけよ…。遅れたら何されるかわかんねぇぞ」
「お、おう…」
爽に促され、足早に教室を出た。
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