第02話 ご先祖様は踊りの神?
体型はあまり変わってないのでとりあえず適当に服に着替えた、じゃっかん一部がぶかぶかな気がするがベルトでなんとかごまかす。
着替えを終えリビングに戻ると丁度お迎えが来たようだ。今日の姉ちゃんは長袖のブラウスにバックリボンワンピースという格好らしい、初めて見る服装だったので聞いたら「可愛いでしょう」とスカートを摘み少し持ち上げながら教えてくれた。
実際似合ってるし背中のリボンが可愛いと思うけど、そんな姉ちゃんの反応を見て身も心も女性なんだなと感じた。そのうち俺もワンピースやスカートを履いて自分のことをかわいいと言える日が来るのだろうか……。
いや、まあ今の見た目は可愛いと思うよ、今そういう服を着ても可愛いと思うが、それはゲームとかで女の子のキャラをコーディネイトしてかわいいと思う感じであって、決してかわいい格好をした自分を他人の目から見て、かわいいでしょ? って言う事ではない。自分で何を言っているのか分からなくなってきたが分かってもらえるだろうか。
それはさておき迎えの話だ、本家に行くときは毎回お迎えがくる、黒塗りのミニバンで特注の防弾仕様らしい、ここ日本だよ防弾ってなによと初めて聞いた時は思った。外からは中が見えないように窓も黒くなっている。
外に出ると一人の男性が車の横で待っていた、運転手は毎回違うが今回はばあちゃんの筆頭秘書的な立ち位置の初老の男性が来ている。
「高槻さんおまたせしました」
「いえ、本日はおめでとうございます、怜様に置かれましては……」
「その事はまだ、あちらについてからお母様とお話しようかと」
「これは失礼致しました、では早速向かうといたしましょう」
「はい、よろしくお願いします」
何が「おめでとう」なのか分からなかったけど、とりあえずみんなで車に乗り込み本家へ向かうことにした。本家への移動はいつもこんな感じで車での送り迎えになっている。
10分ほどかけて本家に到着した、本家はなんの冗談かと言うような作りになっている、敷地は全部堀に囲われおり堀は水で満たされている、大きな武家門(遠隔で開閉が可能)をくぐると10mほどの橋がかかっておりその先には内門がある、ホント何処の城だよって言いたくなる。入ってからは直進せずに、壁に沿うようにしばらく走り何度か曲がると目的の屋敷に到着した。
車を降りると、使用人勢揃いな感じで左右に並び、きっちり同じタイミングで「「「「お嬢様怜様おめでとうございます、我々一同お慶び申し上げます」」」」と頭を下げられた。本家には何度も来ているがこんな対応は初めてですごく戸惑った、とりあえず母さんと一緒に「ありがとうございます」と返しておいた、多分俺が女になったことは本家にとっておめでたいことなのだろう。
「ご当主様と旦那様は奥の間にて皆さまをお待ちしております」
「ありがとう、案内は結構よ」
「承知いたしました、それでは我々は控えておりますので御用の際はお呼び下さい」
こう言う対応を見ると母はほんとお嬢様なんだなと思う、家じゃ天然80%でポヤポヤしてるのに。
俺たちは使用人さん達を通り過ぎ玄関から中に入り早々と奥の間に向かった。いくつかの部屋を通り過ぎ奥の間手前の閉まっている襖の前で一度座る。母さんが中に声を掛けると「お入りなさい」との返事があり、中に入ると当主であるおばあちゃんが奥の方に座っていて、その横で控えるようにじいちゃんが座っている。
おばあちゃんだが名前は
「よく来たわね、まずはお座りなさい」
用意されていた座布団に正座で座る、おばあちゃんがおじいちゃんに目配せするとおじいちゃんは1つ頷き無言で部屋を出ていった。少し待つように言われ待っていると、おじいちゃんがお茶を俺達の前に一つ一つ置いてくれる、お礼を言い喉が渇いていたので一口、自然と「おいしい」という言葉が出ていた、それが聞こえたのか座り直したおじいちゃんはこちらに目をやり笑顔を浮かべながら頷いた。
「どう?お爺ちゃんが入れたお茶は美味しいでしょ?また腕を上げたのよ」おばあちゃんもお茶を一口のみ、嬉しそうにに笑顔をおじいちゃんに向けながら言ってくる。
そのいつも通りのばおあちゃんとおじいちゃんを見て緊張で肩に入っていた力が抜けるのがわかった。
「ふふふ、怜も落ち着いたかしら?そんなに肩肘張らなくても良いのですよ」
使用人さん達の対応などをみて、屋敷の雰囲気がいつもと違うのを感じ緊張していたのがおばあちゃんにはお見通しだったようだ。
「聞きたいことは色々あるでしょうけど、まずはこちらの話しを聞いてもらえるかしら?」
「うん、おばあちゃんに任せるよ」
おばあちゃんは1つ頷き「そうね、まずはこの
そして語られる我が家の歴史。
我が比売神家は神話の時代から続いてると言われている、流石に古い時代の事なので書物が残っているわけではないが、口伝として代々氏族に語り継がれているとの事だ。
最古の物は
この呪いなのか祝福なのか男から女になる現象は別家となった時から続いているんじゃないかな、もしかするとそう言う特性が現れたので、別家として立てられたのが比売神家の始まりなのかもしれない、その辺りの詳しい事は後で聞いてみようと思う。
その後は歴史の表に出ること無く、時の権力者などに囲われて特別な祭事などに関わったりしながら今に至るとの事だ、まあ男から女に変わるなんて神か物の怪かって感じだけど、我が家の長い歴史が示す通り祭事を司る神子として扱われてきたのだろう。
ここまで聞いて一息「少し休憩しようかしらね」とのおばあちゃんの一言で冷めたお茶を飲もうとした時あれが来た……足をもじつかせていると姉ちゃんがそれに気づいたようで近寄ってきて耳元で俺にしか聞こえないように「おトイレ一人で出来る?ついていってあげようか?」なんて聞いてきた。うん、そう尿意がね襲って来たのだよ。
「う、あ、だ、大丈夫一人で出来るから」
いそいそと席を立ちトイレへ向かう、その後はなんとか戸惑いながらも用を済ますことが出来た、男の時と違ってなんかね、うまく説明できないけど前傾姿勢にならないと大変な事になるとだけ言っておこう。
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