中身が男でも百合は成立するのだろうか 連載版

三毛猫みゃー

1章 TSしたけど女の子って大変だ

第01話 TSは突然に

 目を覚ました時、特に違和感は感じなかった。いつものように母さんの「朝ごはん早く食べなさい」という声に起こされ、欠伸をしながら伸びをする。時計とカレンダーに目をやると時間は朝の7時を過ぎた所だった、今日は3月最後の土曜日あと2週間もすれば中学校の入学式だ。


 ベッドから降りると微妙に頭が重たい気がする、昨日夜更かししたせいかも知れない、重心もなにかおかしい気がする、少しふらつくように部屋を出てダイニングへ向かうと両親と姉ちゃんは既に席へ座って食事を始めている。


 両親と姉ちゃんに向かって「おはよう」と言いながら席に着く、手を合わせ「いただきます」と言おうとし正面に顔を向けると驚いた顔をしている両親が見えた。

 何に驚いているんだ?と思いつつ横の姉ちゃんを見ると姉ちゃんも同じような顔で固まっている。


「姉ちゃん俺の顔になにかついてる?」


「……、怜あんた取り敢えず洗面所に言って顔洗って鏡見てきなさい」


 怜こと姫上怜ひめがみれいそれが俺の名前だ、ちなみに姉ちゃんは姫上のぞみで母が姫上ひかり、ついでに父は姫上隆行たかゆきだ。母さんと姉ちゃんは二人並べば親子と見られず姉妹と間違えられそうなほど似ている。


 40超えているはずなのに未だに20歳の姉ちゃんと姉妹と思われるなんて、母さんの若作りはぱないと思う。小学校低学年の頃は女顔だった事もあり俺と併せて3姉妹とよく間違われたものだ。ここ最近は顔立ちが少し男っぽくなったおかげで女の事間違われることも無くなった。


 それはさておき顔になにか付いているのだろうか、取り敢えず手でぺタペタ触ってみるが何かがついているような感じではない。両親の方に視線をやると姉ちゃんと同じ様に鏡を見てくるように言われた。


 席を立ち洗面所へ向かう事に、そして俺は洗面所で鏡を見た時12年という短い人生の中で一番の衝撃を受ける事になった。鏡の中には超が付くほどの美少女がいたのだ! ごめん美少女は言い過ぎだな、なんていうか若い母さんというか小さい頃の姉ちゃんが映っている。新手のドッキリか何かだろうか鏡に手をやってみても硬い鏡面に触れるだけ、鏡面に触れている手に目をやると心なしか自分の手にしては小さい気がした。


 自分の頬に手をやる、ほっぺたを軽くつまんで見る「いひゃい」鏡に映る美少女もほっぺたを自分の手でつまんでいる。ここまでくれば流石に鏡の中の美少女が誰なのかわかった、信じたくないがこの美少女は俺なのだろう、まだ頭が寝ているのか考えがまとまらない。


 この美少女を俺自身と仮定して見てみると、日で焼けていた顔は白くなり少しふっくらとなった頬、ぱっちりと開かれた目、短かかった髪は背中の中ほどまで伸び艶やかで濡れたように見える黒髪になっている。


 そっと胸に手をやってみる……続けて半袖パジャマの首元を中のシャツごと広げ見てみる……ぺったんこだ何もない、元々無かったのだから特に思うところはない、うん無いのだよ。


 下に手をやってみるもよくわからない、パジャマとして使っている短パンを下着諸共下ろして見てみる……何もないからヨシッ!いや良くはない取り敢えず短パンを引き上げて鏡を見る、そこには顔が茹でダコのように真っ赤に染めた美少女が映っていた、頭より体が先に反応するんだなと、どうでもいい考えが浮かんだ。


 ダイニングに駆け込み呑気に朝ごはんを食べている姉ちゃんと両親に「何これ、俺どうなったの?なんで皆普通に食事してるの、鏡の中に美少女がいるんだけど!それにあれもないし、胸ぺったんこだし、わけがわからないよ……」とまくし立てた。


 ほんとなにこれナニコレ、俺の男はどこ行った? 女の子なのに胸ぺったんこ?背も縮んでるし美少女になってるし、大絶賛混乱中ほんと何を何したらこうなるんだ。姉ちゃんに頭を軽く2回ポンポンと俺を落ち着かせる用に叩かれる。


「怜少し落ち着きなさい、ほら一回深呼吸ね、ほら一緒にヒッヒッフーよ」


「ヒッヒッフー……姉ちゃんこれ深呼吸違うよな」


「落ち着いたなら一緒よ一緒、ちゃんと説明してあげるから、先にご飯済ませなさい」


「いや、でも(ぐぅー)」お腹が空腹を自己主張してきた。


 典型すぎる展開に頬が熱くなるのがわかった、他所から見るときっと顔が真っ赤になっている事だろう、大人しく席に付き食事を始める、朝食はご飯に味噌汁にレタスと目玉焼きにソーセージだった。


 食事をしていると、食事を終えた姉ちゃんと両親が「本家に連絡を」とか「出かける準備を」など話しているのが聞こえてくる。この後俺は本家に連れて行かれるらしい、それは良いことなのか悪い事なのかわからない。


 食事の量はいつもと変わらないのに胃が小さくなったのかちょっと苦しい、なんとか食事を終え食器を台所で洗い水切りに置いておく。冷蔵庫から牛乳をコップに注ぎ飲む、うっ苦しいいつもの調子で飲んでしまったがお腹が限界だ。コップを洗い膨れたお腹をさすりながらリビングで寛いでいる姉ちゃんの元へ向かう。


 この姉ちゃんだけど俺と8歳違う、今の俺と似た容姿をしていて違う部分は胸の大きさと身長であろうか、髪は日によって違うが今はポニーテイルにしている、今は大学に通いながらたまに本家で巫女のバイトみたいな事をしているらしい、結構いいお小遣い稼ぎになると言っていた。


「それで姉ちゃん、ちゃんと説明してくれるんだよな?」


「そうねどこから話せばいいかな……まあ一番知りたいと思うことから教えてあげる、もう理解してると思うけど怜あなたは女の子になったそれは分かってるよね」


「まあ、その、うん」


「結論から言うとね、男にはもう戻れないから」


 男に戻れないとは思ってなかったけど、そう言われてもあまり実感がわかないのか、そうなんだーとしか考えが浮かばなかった。


「どうしてそう言えるのか気になるんだけど、本家に行くと言ってたから本家が関係あるってことなの?」


「根拠はまあ、その、ね……母さんも私もあなたと一緒で元々男だったからよ、あとは本家が関係あるかってことだけど関係あるといえばあるかな」


 さらっととんでもない事を聞いた気がする、母さんも姉ちゃんも元男とか聞こえたような。


「えっと姉ちゃんも母さんも元々男とかマジ?」


「マジでマジの大マジよ、怜が幼稚園に通ってる時なんかはバリバリの中1男子だったわよ、私の場合は中1の夏休みが終わった後に女の子になったからね、急な転校とか色々大変だったわ」


 なんとなく覚えているような、たしかに兄がいたような気はしてたんだ、でも家にある写真にも男の子が映っている写真も無いし、きっと親戚かなにかかと思ってた、でもよく考えると母方の親戚は全員女性だし、父方の親戚にも対象となる年の男の子は居なかったと思う。


 写真とかどうしてるの?と聞くと写真を含めて捨てられないものは本家の蔵で保存されているらしい、俺の今までの写真もそこに行くとの事だ。


 ちなみに母さんは大学生の途中で女性になったそうだ、そんな母さんと幼なじみで親友だった父さんが、男から女になった母さんを受け入れて結婚したってのを聞いて驚きすぎてしばらく思考停止した。余談になるが父はかなりマッチョメンである、たまに鏡に向かってポージングしているのを見かけるが、家族全員見ないふりをしていたりする。


「あと詳しいことは本家でおばあちゃんに聞いたほうが良いかもね」


「うん、分かった……それで、姉ちゃんは女になった事、今はどう思ってるの?」


「そんなのとっくに受け入れて解消済みよ、あなたも行くことになる神樹しんじゅ女学院で色々あったからね」


「俺女子校に通うことになるんだ……、まあ女になりましたなんて言っても信じてもらえないだろうし、この姿で小学校の同級生とあってもどうして良いかわからないしな」


「そう気負わずに楽しみなさい、あそこ理事の一人はおばあちゃんだし、学院長は沙織さんだからね」


 ばあちゃんが女学院の理事長をしているのにも驚いたが、沙織さんがその学院の学院長だったのは初耳だ、沙織さんというのは母さんの妹のことだ、つまり叔母である。沙織さんには俺の2つ年上の娘と同級生の娘がいたはずだ、この2人と通うことになるのだろうか。


「なあ、もしかしておばあちゃんも沙織さんも元男だったりするのか?」


「沙織さんは違うって聞いたわ、おばあちゃんに関しては元男だよ」


 ばあちゃんから来て母さんでそして姉ちゃんと俺というわけか、なにか法則性みたいなのがあるのかな?でも母さんの妹は元から女であって……わからん。母さんの妹は3人いて沙織さん以外はどうなのか聞いてみると、他の人は最初から女性だという事とその子供は全員女性として生まれているとの事だ。


 そこまで話を聞いた時点で母さんから、本家に行くので着替えるように言われた、そういえばまだ寝巻きのままだった、席を立ち自室に向かう途中で姉が「新しいショーツとブラ貸してあげようか?」なんてニヤニヤしながら言ってきたので全力で断っておいた。


 そんなの渡されても、まだそれを履いたり着けたりするのは恥ずかしい、あとブラをするほど胸ないです、真っ平らだからな。

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