コウジ!アンコ!合体だッ!!

効果遺物こうかいぶつ

人の手を離れ能力がかかったまま独立した物体。

それを自分たちで作ろうと羽柴を筆頭に部員は躍起になっていた。


まず、今の俺たちの能力を振り返ろう。

俺は手元の特殊効果リスト①を開いた。





―――――

神楽かおる

【効果名:パッケージパージ】


使用条件:

心の中で『カタヒラレイコ』と呟く


効果:

梱包された物体を製作者の意図通りに開封する。

―――――


―――――

高山コウジ

【効果名:ダストシュート】


使用条件:

自分の身長が182cm以上の時


効果:

自分が放ったゴミを必ずゴミ箱に入れられる。

―――――


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羽柴ミライ

【効果名:二段ジャンプ】


使用条件:

ジャンケンでチョキにグーを出して負ける


効果:

一度ジャンプした後に空中でもう一度だけジャンプできる。

―――――


―――――

椿こはる

【効果名:人数合わせ】


使用条件:

自分から見て何かの規定人数が1人足りない時


効果:

ペロちゃんを呼び出す。

―――――


―――――

廻神あんこ

【効果名:異界の扉コール・オブ・アビス


使用条件:

魔界から来た設定で生活している時


効果:

自分の使用するドアと、指定したドアの先の空間を接続して移動できる。

―――――





う~ん、これは。


「無理だな!」


と満場一致の意見が出た。

何故ならば『効果を付与する効果』が無いからである。

基本的に俺たちの能力は自分が何か特殊なことが出来るという能力だ。

その場に何か影響を残す能力では無いのだ。


「こら〜!!吾輩の最強の能力を忘れたのか!!扉を別の扉へ繋げる最強能力を!!」


「いや、でもなー。

能力かけた後にもう1回開け閉めすると効果切れちゃうしなぁ。」

と俺は反論した。


「え、いや...それはなんかつっかえ棒とかして...」


と、議論はやはり効果遺物を作れるという方向には進まなかったが、あんこちゃんはどうしても能力をもっと発展させたいようだ。

それは俺も同じだが...


と、ここであんこちゃんが何か閃いた様に表情かおをパッと明るくさせて笑を零した。


「フフフ...あ、違う。ひひひ...」


そう言えばそんな笑い方してたな。


「そうだ!【合体技】を作ればいいのだ!」

とあんこちゃんは指を天高く突き上げた。


「効果が永続的に残せないのであれば、今一瞬だけ成立させるだけでもいいのだ!!」


「なるほど。」と部員もあんこちゃんがこの様なまともな意見を出すのを珍しく思ったらしく、ぱちぱちと疎らな拍手が起こった。


合体技ならば俺とコウジはケンカッ兄弟との戦闘で見せた技があったな。

と考え、早速俺たち2人で皆の前で例の技を披露した。


コウジがサイダーを窓から外に投げ、俺が《カタヒラレイコ》と呟いた瞬間、グンと速度の上がった缶が白い泡で尾を引いて空中に円を描いた。

舞い戻った缶は教室のゴミ箱に勢いよく突っ込んだ。

「おぉ」とびしょびしょの部員たちがベタベタの髪をかきあげて歓声を上げた。


しかし、これは端的に言えば勢いの付いた缶をゴミ箱に入れられると言うだけの技だ。

ケンカッ兄弟以外に使う道はないだろう。


だがあんこちゃんはその合体技の派手さに感化されたらしく、俺との合体技制作を申し込んできた。

よく考えればお互いに『ドアを使用する事が出来る能力』という共通点もある。

当然と言えば当然かも知れない。


それから結局、今回の合体技制作は俺とあんこちゃんとコウジで行う事となった。

やはり物体に干渉する特殊効果でなければ、能力の応用は難しいのだ。




―――――




数十分後、外野からぶつくさ文句を言う羽柴、椿ちゃん、ペロちゃんをよそに、俺達は遂にその完成した技を披露することとなった。

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