ステージ14 赤葉の帰還
「
「兄さんがそれ、忘れていていいわけ? 責任者でしょう?」
「今回のツアーはあくまでもハンターキャッツでやっていることだ。
「そういうもの?」
「そういうものだ。関係ないことまで気にしていると、『気にする』こと自体に時間を取られて実際になにかをする時間がなくなる」
そう言われれば納得できないこともない。しかし、日頃から『いかに手を抜くかが大事』と言っている
「それで、
「『大盛況、大入り、大盛り上がり。ふぁいからりーふ初のツアーは
その言葉に――。
さくらは眉をひそめた。
「それ、本当? 盛ってるんじゃないの?」
別に
その点では
「まあ、
――いや、さすがに一〇倍は失礼でしょ。
思わず、心のなかでそうツッコむさくらであった。
「それぞれのメールを総合するとまあ、『小成功』と言ったところらしいな。
「そう。それならよかったわね」
さくらは胸をなで下ろした。
正直、
――
「ともかく、ツアーは無事に終わった。明日には帰ってくるそうだ」
「そうなんだ。じゃあ、打ち上げとかはやるの?」
「このツアーはあくまでハンターキャッツの行ったもので
「でしょうね」
と、さくらも心からうなずいた。
お祭り好きのお調子者、という点では
とは言え、
その日はなつみや
まずはなつみの
とにかく、整いすぎるほどに整った顔立ちの美少女だけに、こうして敵意むき出しの表情になると本当に怖い。並の男ならこんな表情で睨まれたら尻尾を巻いて逃げ帰るにちがいない。そう思わせるぐらい
――これなら、あたしがなつみの側にいる必要もないわね。
さくらはそう思った。
とは言え、『
普通であれば少女ふたりからこんな表情で睨まれていてはたまったものではない。思わず逃げ出すか、
しかし、そこは
やがて、検査が終わった。
「問題ない。良くなってはいないが悪くなってもいない。この
「……よかった」
なつみが、そして、
「なつみ。お前自身の感覚はどうだ? 異常はないか」
「うん、だいじょうぶ。さすがに故障前ほどじゃないけどちゃんと反応してるし、痛みもない。これならちゃんと踊っていけるよ」
「そうか。それはなにより。しかし、くれぐれも言っておくが張り切りすぎてオーバーワークはするなよ。
その言い草に――。
なつみは静かにうなずいた。
「うん。わかってる。また
その言葉にはなんとも言えない実感がこもっており、なつみがいかに踊りにかけているかがはっきりとわかった。
その言葉を受けて――。
「心配しないで。オーバーワークなんて、わたしが絶対にさせない。危険になったら必ずとめる」
この日はなつみがはじめて補助器具と
「素肌に直接、補助器具を取り付けるとは思わなかったわ」
「体の弱った年寄りがひとりで風呂には入れるように、が、開発のコンセプトだからな。素肌に直接、取り付けられなければ意味がない」
「なるほど」
と、なつみは感心したようにうなずいた。
ちなみに、
「でも、これ、すごいわね。素肌に直接、取り付けているのに全然、不快感がない」
「うん。そうだよね。それに、しっかり体を支えてくれるのに
「この
なつみと
「その点はさくらが熱心にモニターを務めてくれたんでな。うまい具合に調整できた」
「そうなんだ。ありがとう、さくら」
「お礼なんていいわよ。あたしに出来るのはそれぐらいなんだし」
そうは言ったものの――。
さくらの顔にはくすぐったいような、誇らしいような、そんな表情が浮いていた。
「それと……」
「いちいち『
「
「手足が
さっそく、
「やっぱり、手足が広がっている分、水の抵抗はかなりあるね」
「着やすいように大きく作ってあるから、水の抵抗で服全体がけっこう揺れるしね」
「
「それより、水深をもっと深くしてくれない?」
「水深を? どれぐらいだ?」
「胸の下ぐらいまで」
「そこまで深くしたら浮力が強くなりすぎて動きづらいんじゃないか?」
「そうだけど……でも、ある程度の水深があった方が潜ったり、浮いたりの立体的な表現が可能になる。せっかく、水のなかで舞うなら、陸上では表現できない水中ならではの動きを取り入れないと意味ないでしょう」
「それは、たしかに。なら、水底に段差を作って水深をかえてみるか?」
「あ、それ良いかも。水深がかわればそれだけ表現の幅も広がるしね」
なつみもそう言った。
「まあ、段差をつけると言っても階段状にするか、スロープ状にするかといった点もあるし、いろいろと試してみよう」
空を見上げた
「
「あれが、部屋えもん……」
「……すごい。本当に部屋が空を飛んでる」
なつみと
話だけは
部屋えもんが
「なつみ!
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