第13話 本拠点
ミーネが眠りについてる間、俺は旧食堂内の掃除をしながらこの後の動きについて考えていた。
俺たち勇者には、勇命結晶柱を生やす事で出来るチェックポイントの他に”王喚びの神殿”と呼ばれる本拠点が存在する。
この本拠点に行くためにはチェックポイントを起点としたワープを行わなければならないのだが、本拠点へのワープを行うためには大量の生命力が必要になってくる。
逆に、潤沢な生命力さえあればミーネのような救出した民間人をより安全な本拠点へ連れていくことも出来るのだが今の俺の手持ちではミーネを運ぶどころか俺一人ですら王喚びの神殿に飛ぶことが出来ない。
基本的に、チェックポイントからチェックポイントへのワープは距離に応じて消費する生命力の量が変動するので、魔法障壁の向こう側にある神殿へ飛ぶのに大量の生命力を必要とするのは仕方がない事なのかもしれない。
(まあ、何の代償も無しにワープ出来る技術がこの世界にあったら。 各国の王たちだけでも霧から逃げられただろうしな)
現状ワープに必要なのは王脈と勇命結晶柱そして怪物を殺すことで得られる生命力だ、これらが全て揃って初めて移動できるこのシステムを普及させるのはどう考えても危険すぎる。
(生命力が必要なこのワープが普及すれば、最悪…ワープのために生贄が用いられてたかもしれない)
「……」
(怪物とはいえ、もとは人)
勇者の活動には欠かせない生命力も、かつて人だった誰かの命を奪って得ているわけだ。
「まあ…」
(
これがソルドーとなったことによる思考の変化なのかは分からないが、この世界で目覚めてから俺は勇者としての在り方…即ち殺しによる生命力の確保を自然と受け入れていた。
「……ぅ…ゅ…」
「……」
結晶柱の傍で丸くなり寝息をたてているミーネの肩に、掃除中見つけたテーブルクロスを毛布代わりにそっと掛けてやる。
ゲーム内では救出イベントの後、街で拾い集めた物を勇者たちに販売する商人になっていたミーネだが。
こうして実際に息をし生きている人としてミーネをみると、どうしても彼女の過酷な境遇とこの先に待つ未来について考えずにはいられない。
(一先ず、ミーネを本拠点に連れてけるくらいの生命力は確保しなくてはな)
広場での死亡フラグは折ることが出来た。
(だが…このままここに居させては、遅かれ早かれ― )
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