第11話 ミーネ
「片付いたぞ」
「ぁぁ…ぁあぁ…」
化け鼠が息絶えたのを確認し、俺は栗鼠人族の少女ミーネにそこから降りてくるよう声を掛けた。
「ぃ……ごめんなさぃ…」
彼女に襲い掛かっていた怪物はもう死んだというのに、ミーネの震えは止まらなかった。
むしろ、この怯えようは化け鼠たちに囲まれていた時より酷いかもしれない。
(まあ…それも仕方ないか)
何せ、今しがた俺が殺した化け鼠はミーネの両親なのだから。
◇◆◇
街一番の大工だったアタチのお父さん、料理上手で優しかったアタチのお母さん。
それとアタチ、ミーネ。
三人いっしょ、家族でいっしょ。
毎日たのしい、毎日うれしい。
ある日街にやってきた黒いモクモク。
お父さんとお母さん、モクモク吸って壊れちゃった。
アタチは二人をお家に閉じ込め、あちにこちに逃げだした。
逃げたアタチ、一人ぼっち。
さびしくて、こわくて。
壊れちゃえって、モクモクいっぱい吸ってみた。
モクモク吸ったら、腹ペコでも平気になった。
眠くても平気になった。
凄いでしょって呟いたけど、壊れちゃったみんなは聞こえない。
アタチこそこそ、隠れて生活。
毎日かくれんぼ、見つかったら死んじゃうよ。
こんな毎日たのしくない、かなしいよ。
疲れたアタチお家に帰る。
玄関あけたら、壊れたままのお父さんとお母さん。
ただいま言っても聞こえない。
ガジガジガジガジ、アタチをご飯だって思ってる。
さっきまで、もういいやって思ってたのに。
アタチは急に怖くなって逃げ出した。
広場の噴水、よじ登って。
蛙さんの頭の上で、ガクガクぶるぶる震えてた。
ここの広場は、思い出の場所。
お休みの日はここにきてよくご飯を食べたっけ。
今日のご飯はアタチみたい。
閉じ込められてた二人は腹ペコ。
ガジガジガジガジ。
アタチを食べたら元気になるかな。
「やっぱり死にたくない…死にたくないよぅ…」
気付いたらアタチは叫んでた。
みんな壊れちゃったこの街で、誰かって叫んでた。
アタチが助けを求めたんだ。
だからこの人は悪くない。
お父さんとお母さん、死んじゃったのはアタチのせいだ。
「ぃ……ごめんなさぃ…」
「ほら、先ずは降りてこい」
「ぁ…ぇ…? 」
アタチを助けた、銀髪おじさん。
大きな両手でアタチを抱えた。
「辛かったな、もう大丈夫だぞ」
知らないおじさん、大きなおじさん。
「一先ずここを離れよう」
アタチを抱えて歩き出した。
「ぁぅ…ぅぅぅ…」
ありがとうって。
助けてくれてありがとうって。
お礼をしなきゃいけないのに。
ぽろぽろぽろぽろ。
涙が出ちゃって。
アタチは何も言えなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。