第10話 救出
広場に駆け付けると二体の化け鼠が蝦蟇噴水という名前の由来にもなった蛙のオブジェに詰め寄っていた。
どうやら奴らは、蛙の頭頂部で震えている少女を喰らおうと躍起になっているようだ。
(あの少女は…間違いない。 商人の女、ミーネだ)
ミーネはストーリーの進行に欠かせないキャラではないのだが、ストーリーの序盤で発生するイベントを見逃さずに救出する事で一部のアイテムを他の商人から買うより安く購入できるようになるのだ。
「やっぱり死にたくない…死にたくないよぅ…」
「ギギャギャッ! 」
「ギィィ! 」
二体とはいえ敵が複数いる以上、前回のように弾きを狙った戦いを挑むのはリスクが大きい。
(テクニックがダメなら、パワーで押し切るしかないな)
大斧を肩に担ぎ、俺は自らを鼓舞するように雄叫びを上げた。
「ギッ! 」
「ギィ…? 」
「さあ来い、怪物ども」
白鱗岩の大斧に初期からセットされている武技”土起こし”。
その名の通り、斧を地面に深く突き刺し周囲の地盤ごと敵を掬い上げるこの技は武器が武器なので威力はいまいちだが序盤では貴重な範囲攻撃となっている。
(力を溜める動作が長いことが欠点だが…この距離なら間に合う)
「ギィガァァ!! 」
(今だ…! )
「ふんぬ! 」
土砂と共に空中にかち上げられた二体の化け鼠は、無防備な腹を晒すように地面にひっくり返された。
「ギギャ! 」
「逃さん」
身を捩り、危機を脱しようとする化け鼠たちの土手っ腹に俺はすかさず追撃を入れるのだった。
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