第8話 巨腕のゴネス
「着いたな」
鼠というにはあまりにも大きいゴネスの後ろ姿を確認し俺は拾い集めた空き瓶を手に取った。
これは本来中ボスである奴を倒した後に入手できるアイテムのテキストを読むことで分かる内容なのだが、ゴネスという鼠人族の男は怪物になる以前に事故で視力を失っており肉体が変異した後も一切目が見えていない。
怪物になった影響なのかそこら中に遺体や汚物が散乱する土地の影響なのかは分からないが、基本的にこのゲームに登場する敵は索敵のさい嗅覚を用いてこない…つまり、目が見えないゴネスは聴覚だけでこちらの位置を探っているということになる。
それ故に、投げつけることで大きな音が出るこの空き瓶というアイテムは奴との戦闘で非常に役に立つのだ。
(先ずは…静かに動かないとな)
中ボスであるゴネスはエリアに入っただけで強制的に戦闘が始まる類のストーリーボスや大ボスと違い、奴に存在が気づかれるかこちらから攻撃を加えるまでは何もしてこない。
俺はゴネスとの戦闘エリア内にある酒蔵にそっと近づくとその扉を押し開いた。
ギギィィィ。
「ウゥ…? 」
(よし…! )
今の音でゴネスは立ち上がり辺りを警戒し始めたが、奴の動きを見るにまだ俺の存在には気づいていないようだ。
(はじめるか)
俺は手に持つ空き瓶をゴネス目掛けて投げつけると、すぐさま次の空き瓶を取り出した。
「グォォォォ!!! 」
(これで完全に俺の存在に気付いたな…! )
「ツブス…! 」
ボス敵は怪物化した状態でも言語を操れるものが多いが、ゴネスが喋る明確な言葉は「潰す」のみ。
(パワータイプらしいシンプルさだな)
「ウォォォォ!!!! 」
攻撃を仕掛けてきた相手が自分の近くにいると踏んでか、ゴネスは巨大な両腕をがむしゃらに振り回し地面や建物の壁をデタラメに殴りつけている。
(そろそろだな)
ゴネスが暴れ始めてから一定の時間が経過したことを確認し、俺は二本目の空き瓶を酒蔵に投げ入れた。
バリーン。
「ゥオ…! ツブゥゥゥゥス!!!! 」
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