第6話 月光が遮られた日

「サジイイイイイィィィ!」


「姉…ちゃ…にげ」


ガブッ!


魔物がサジの顔を喰いちぎる…!


「あ…」


魔物がサジの頭からずるずると平らげる…。


ぐちゅ…ぐちゅぐちゅ


ララは目の前で弟が食される姿を見て叫び声をあげる!


「いやああああああああ!」


「次は…おま…のばんだ」


「サジ!?サジ!!?」


<姉ちゃん…逃げて!!>


ララの脳内に先ほどのサジの言葉がこだまする。


ララ

「はっ!?」

(何をしているの…私……)

(ダメ…逃げなきゃ…逃げなきゃ…動いて…!!)


ララの足は震えている。


(ここで私も死んだら……サジは何のために私を守ってくれたの…?)

(サジの死を……無駄にするつもり!?)


ララは立ち上がる…!

そしてララは駆け出した!ひたすら走り出した!


ララ

(お父さん…お母さん…サジ!)


ララは涙を流しながら駆け出す…!


「あ~逃げられちまったよ……」

「モグモグ……まあすぐ追い付けるだろう」


魔物がサジを食している間にララは玄関を抜け出し、外へ出た!

ララが外に出て目に見たものは、魔物たちに食される村人たちの姿だった…。

まさに地獄…。

ララは正気を保つのに精一杯だった。


(誰か…もう逃げ切れない…。死んじゃう…)


ララはひたすら前へ進む。

そしてたどり着く…ご神体の前に。


「…神様」


彼女は魔物に引き裂かれた腹を抑えながらご神体の前で祈りを捧げた。


「お願いです…村を助けてください…」


次の瞬間、大きな火の塊がご神体の頭に激突した!

ご神体の頭は破壊され、多くの破片が彼女の前に崩れ落ちてきた。


「あははははッ!」

蛇のような顔をした魔物が高らかに大声を上げる。


「馬鹿が!神なんているわけなかろう!お前らが作り出した幻想に

助けを求めてどうする?だからお前ら人間はアホなのだ!」


「…そんな」


御神体が破壊され、ララは絶望の淵へと立たされた。

そして蛇型の魔物がじりじりとララに近づいていく……。


「お前美味しそうだな…すでに深手を負ってるのか…

死なれたらまずくなるしな…早速頂くとしよう」


蛇型の魔物は口から長い舌を伸ばし、ララを巻き付けた!


「あ…が…」


魔物の舌にきつく締め付けられ、彼女は意識が朦朧としていた…。


(なんで…どうして…こんなことに…)


「いっただきまあああす!」


<カッ!>


いきなり強い光が魔物の眼を襲う!


「な…なんだああ!?」


あまりの眩しさに魔物は少女を離してしまった。


「な…なに…?」


彼女の目の前には大きな光を放つ金色のフクロウが飛んでいた…!


「…鳥?」


(神様が私を助けに来てくれたのね…)


ララの意識が遠退いていく…。


(…ああ…もう意識が…このまま死んじゃうのかな…

 神様…助けてください…)


彼女の意識が薄れていく中、謎の声が彼女に語り掛ける。


『神頼みしてないでさ…君が村を救ってみないか?』


(え…)


『君が魔女になって村を救ってみないか?』


(…何?…声が聞こえる…)


『君が本当にこの村を救いたいのなら…魔女になって魔物を追い払うんだ…』


(…魔女?)


『そう…誰もが恐れる魔女…。魔女の魔力なら魔物たちを一掃することができるだろう』


ララの目の前に黄金のフクロウが降り立つ。

この謎の声の正体は、どうやら目の前にいるフクロウのようだ。


(あなたは…誰?)


『私はトランヴェル…元人間だ』

『私はこの村を救いたい…!だから協力してくれ!!』


(協…力……?)


『そう。君に協力してほしい』

『私には人間を魔女にする力がある。私が君を魔女にして、そして君が魔女の力を使って、魔物たちを退治するんだ!』


(どういうこと…?あなたは一体……何者なの?)


『私が何者かどうかなんてどうでもいい!』

『君が魔女になれば、もしかしたらこの村を救えるかもしれない!』


(私が…魔女になれば…皆を救える…?)


『救える!魔女の力は並大抵のものじゃない。魔物たちを葬り去ることができるはずだ!』


(……でも…無理だよ)


『どうして?』


(あなたの言っていることが本当で…魔女になれたとしても……私はもう…見ての通り…死ぬ寸前なの)


『大丈夫だ!!心配するな!!』

『魔女になれれば、この程度の傷くらいすぐ治せるはずだ!!』

『私は君を見殺しにしたくない。そしてこの村の人たちもそうだ』

『大勢の人が今、魔物に襲われている。まだ助かる命もあるはずだ!!』

『だから…私の提案を飲んでほしいんだ……!』


(私は……本当に……魔女になれるの?…)

(本当に……皆を…救えるの?)


『ああ救えるさ!君が魔女になって魔物たちを追い払うんだ!!』

『このまま死を迎えるより、村を救える可能性があるならそっちに賭けてみないか?』

『頼む!!お願いだ!!魔女になってこの村を救ってくれ!!』


ララは辺りを見渡す。

そこには大勢の人たちが魔物に襲われていた。

まさしく地獄絵図…。ララはこの惨状に涙を流す……。


(……あなたが言っていることが本当なら……私は……)

(……私は…魔女になる……!)


『!!』


『……ありがとう!』

『よし…君は今日から魔女だ!ただ人を脅かす魔女ではなく…君は人を救う魔女となる!』


大きな光がララを包む…。


そして、いきなりララの体から光が放たれる!

その光はララを縛っていた蛇型の魔物の舌を消し炭にした!


「ぐえええええッ!?」

「なんだあ!あの光はあああ!?」


そして次の瞬間、光から大きな電撃が放たれた!


バシュッ!


電撃は蛇型の魔物の上半身を塵一つ残さず消し去った。


近くにいた熊型の魔物が光を見つめる…。

「な…なんだあれは…!?」


大きな光から一人の魔女が現れた…。

彼女の肩には金色のフクロウが止まっていた…。


「お前が私の魔女の第一人者だ…」


ララの体は修復され、彼女には圧倒的な魔力が注がれていた…!


「私は…魔女…」

ララは呟く…


「私は…トランヴェルの魔女…!」

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