第5話 ララフォー・メール

深夜1時…ララフォー・メルは寝付けずにいた。

(今の時刻は1時10分…。ぜんぜん眠くない……)

(しょうがない…こんな日は…!)


彼女は音を立てないように部屋のベランダから身を乗り出し、外へ出た…。

この日は雲も無く、星空が鮮明に見える…。そして今日は満月だった…。


「綺麗な月…」


ララは新鮮な外の空気を吸って心を落ち着かせた…。


(少し散歩しようかな……)

(そうだ……ご神体様のところへお祈りしに行こう)


ララは歩き出し、ご神体へ向かう。


ご神体は月の光に照らされ、神秘的に輝いていた…。

ララはご神体の前で立ち止まる。


(…昔、よくお母さんはご神体様にお祈りを捧げてたな…)


ララの母親は毎日ご神体に祈りを捧げていた。

自分の家族だけではなく、この村が常に平和であるように祈っていたのだ。

しかし、ララが12歳の時、彼女の母は病死してしまった…。

母が死んでから、ララは時々ご神体のところに行っては、祈りを捧げるようになった。


ララは両手を組んで、ご神体に向かって祈りをささげる。

彼女にとって、この村は大切な場所。この村に住む皆は家族当然と思っていた。

母と同じように、この村の平和を祈る。


しばらくして彼女は祈りをやめて、顔を上げる。


(そろそろ戻ろうか…)


清々しい気持ちになったララはご神体に一礼をしてこの場を去ろうとした…が、

あることに気付く…。


(ご神体の扉が…開いてる)


どこから流れてきたのか。大きな雲が満月を覆い隠す…。

そして月の光が遮られ、徐々にご神体の顔が曇っていった…。


(なんでご神体の扉が開いてるの…?誰かが中にいる…?)


ララはその場で固まってしまった…。


(もしかして………誰かいる?)


彼女は恐る恐るご神体の扉へ向かい、中を除いた…。


(え…)


そこには朝カリアと共に森へ出かけたはずのガゼルがいた。


「私は知らなかったんだ…許してれ…」


ガゼルはぶつぶつ呟きながら魔法障壁装置を操作していた。


(おじさん…いったい何を…?)


「これで…解除完了」


(え…今なんて言った…?)


そしてガゼルは扉の方へ振り向き、いきなり走り始めた!


(まずい!見つかる!)


ララは急いで扉から離れ、近くの草むらへ逃げ込んだ!

そしてガゼルは、ご神体を出ては、すぐに村の外へ走っていった…。


(一体おじさんは何をして…)


ガサササ…

風が木々をざわつかせる…。


(なんだろう…物凄く胸騒ぎがする…)


ララは小走りに家へ戻っていった…。


先程は満月の光で足下が見えていたのだが、今は真っ暗で何も見えない…。


(………)


彼女は暗闇で道が見えずとも、家までの道のりは把握していた。

何とか

何とか彼女は家に着くことができた。急いでベランダの窓から自分の部屋に戻ろうとした。


その時ある違和感に気付く…。


「…窓が…」


ララは青ざめた…。部屋の窓が割れていたのだ…。


(何…?泥棒!?)


ララは急いで窓から自分の部屋に入り、ドアを開け廊下へ出た!


ララは廊下に出た瞬間、自分の目を疑った…。

廊下の壁には大穴が空いており、地べたには花瓶が倒れ砕け散っていて、さらにカーテンも引き裂かれていた。


「なに……これ」


(嫌な予感がする)


彼女は急いで父と弟を探し回った。

父の寝室にたどり着き、部屋に入ろうとドアノブを回したが…


(開かない…!?)


「お父さん!」


ララは大声をあげてドアを叩く!


ドスッ…


「え…」


ふと気がつけば…彼女のお腹に獣の爪が突き刺さっていた…。

獣の爪は部屋の内側からドアを破ってララのお腹を刺したのだ!

ララのお腹からじんわりと血がにじんでいく…。


「あ…」


爪は彼女のお腹から引き抜かれた。そしてドア越しから声が聞こえてくる。


「これは新鮮な血だ…うめぇ」

熊型の魔物が、ララを刺した爪を舐める。


ララはお腹から溢れる血を抑え、その場から逃げ出す!

彼女は突然の出来事で、パニック状態に陥っていた。


ドガアアン!!


熊型の魔物がドアを蹴破り、部屋の外へ出る。そして即座にララを追いかける!


「ヒャッハーッ!!まだこの家に人間がいた!今日は人肉パーティーだぜえええ!」


ララは廊下を駆け出し、必死に玄関へと向かう!


ガッ


阿鼻叫喚に逃げる中、何かが彼女の足に引っ掛かった!

彼女はその場で倒れる…。


「い…痛…」


そして彼女の目に入ってきたのは…


「ひっ!!?」


腕…。


さらにその腕の先には…。


「お父さん…!」


そこにはララの父が倒れていた…

下半身がなかった…。


「そん…な」


「あははッ!逃げても無駄無駄ああ」

後ろから熊型魔物が追いかけてくる…!


「お父さん…お父さん!」

ララは必死に父親に呼び掛ける…。


「そのおじんの肉は固かったからなあ…お前のような若い奴の肉が一番うまそうだ」


魔物がひしひしとララへ近づく……。


「天の恵みに感謝感謝!いたただきまあす!」


熊型魔物は鋭い爪をララへ突き放つ!


ガッ!


「ぐおっ!?」


突然横から、ろうそくスタンドが魔物の爪の一撃を防いだ!


「姉ちゃん!逃げろ!」


「サジ!」


ララの弟サジが魔物と対峙する…。

熊型の魔物はじゅるりとヨダレをぬぐい、鋭い牙を光らせた!


「おお…今日は大量だなあ…さすがの俺でも喰いきれねぇわ~…そうだ、メスは干物にして今はこのオスの肉を喰うか!」


ララはあまりの恐怖に身を震わせている……。


「姉ちゃん!立って!逃げるんだよ!姉ちゃん!!」


「いただきまーす!!」

魔物の爪がサジとララを襲う!!

サジはろうそくスタンドで魔物の攻撃を防ごうとする!

しかし、魔物の爪はスタンドを簡単に切り裂き、さらにサジの上半身をも切り裂いた!


「ぐわあああああああッ!」


サジの悲鳴が屋内に響き渡る…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る