第9話 園児vs園長の戦いは、こうなったのです!「マキちゃん?どこに、いっていたの?」「ひみつ!」ユズハ先生に、チュッと、口づけ。

 「ねえ、えんちょうさん?あなたのすわっている、ごつごつのさんかくいすと、このソファーを、こうかんしてあげましょうか?」

 ノワキ園長は、涙を流して、この言葉に飛びついた。

 「本当ですか?本当に、そのソファーに、座って良いのですか?」

 「ええ」

 「お願いです。交換してください!」

 「うーん、どうしようかなあ」

 じらして。

 「どうしようかなあ…」

 じらして。

 「交換、してください!」

 「どうしようかなあ…」

 涙目になっていく、ノワキ園長。

 ランカちゃんは、一旦、ソファーから、立ち上がった。

 「お願いです、金なら、もっています!」

 「あらあ。おとなは、きたないんですね」

 「…うう」

 「じゃあ、えんちょうさん?」

 「な、何でしょうか?」

 「ぎんこうに、おこづかいを、もっているでしょう?」

 「おとな、ですものね」

 「…ええ、まあ」

 「じゃあ、そのおかねで、バスに、みまもりブザーをつけてください」

 「…」

 「つみほろぼしです」

 「…そんな。家のローンだって、残っているのに」

 「ちょっ。なんですか、それ?えんじのいのちと、どっちが、たいせつなんですか?」

 「…わかりました。ブザー、つけます」

 園長は、泣いた。

 そのころ…。

 「マキちゃん、どこ?」

 ユズハ先生の声が、異世界ゲーセンまで、聞こえはじめた。

 「あ、せんせいのこえだ!わたし、かえろうかな?」

 「マキちゃん、もう、かえっちゃうの?」

 「うん。わたしのはんこうき、おわり!」

 「バイバイ、マキちゃん?」

 「バイバイ、ランカちゃん?」

 「マキちゃーん?どこなのー?」

 「せんせい、ここだよー!」

 ユズハ先生が振り返ると、マキが、スクールバスから外に飛び出てきたところだった。

 「マキちゃん?どこに、いっていたの?」

 「ひみつ!」

 ユズハ先生に、チュッと、口づけをした。

 「おや、マキちゃん?すがたを、みなかったね?どこに、いっていたんだい?」

 ノワキ園長が、ちょっと離れた場所から、手を振ってくれていた。

 「よし。ちゃんと、やっているね」

 ノワキ園長は、スクールバスのメンテナンスに、とりかかっていた。

 ふざけてなんか、いない。

 …わかっているさ。園児の事故は、楽しい話ですむ問題じゃないっていうことは!

 それでは、皆さん?

 「園児の事故は、スクールバスだけで起こるものでもないんです!」

 って、知っていますか?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る