「冒険者の都」第四都市
第6話「宿は何処?」
「さて、消灯時間になりきる前に宿を見つけるぞ」
消灯時間とは何だろうか。ルーンの袖を掴んで聞いてみる。
「消灯時間っていうのは、昼と夜をわかりやすくするためのものだよ。此処は陽の光が届かないから、魔術灯をつけて太陽の代わりにしてるんだって」
つまり消灯時間は夜ということか。徐々に光が消えていっているのは日の入りを表しているということなのだろう。それなら早めに宿を探すべきなのだろうが、キーとレイは第四都市に来たことがあるのだろうか?
「で、レイ。当てはあるか?」
「そっちこそないの? ボク第二都市出たの第五都市に来て初めてだからわかんない」
「来たことはあるが高い宿だったからな。多分全員のお金を足しても足りないぞ。安い宿は知らん」
ダメそうだ。何処かに観光客だったり、他の都市から来た人を案内してくれる場所や人は居ないのだろうか。
「はい! 発言権をください!」
自信ありげに、きりっとした顔でルーンが手を挙げる。
「別に会議じゃないんだから好きに発言しろ」
「そういうときはね、冒険者ギルドに行けばいいんだよ!」
知らなかった? とでも言いたげに、両手を腰に当てる。確かに、人が集まる場所に行くのは悪くないだろう。情報の数は人の数だけある。問題は冒険者ギルドが何処にあるかなのだが、この言い方的にルーンはきっと場所を知っているはずだ。
「まぁ、私場所知らないんだけどね」
ダメだった。二人、いや自分もだから三人で溜息をつく。全てが振り出しに戻ったし、そうわちゃわちゃしてたら結構の数の魔術灯が消えていた。さっさと宿を見つけないとご飯も食べれないし寝床は道路になってしまう。
四人で困っていると、青髪の魚人に声をかけられる。
「やぁ子供達! 何かお困りかい?」
「どうも、お兄さん! お兄さんは冒険家?」
「あ、あぁ、そうだとも! なんたって両親はあの凄腕冒険家グラナとアントだからね!」
「すごーい!」
キラキラと目を輝かせるルーン。そんなにグラナとアントは冒険者の筋では有名らしい。
「グラナさんとアントさんって確か未開地域探索隊の隊長と副隊長だよね! 私の両親も」
「ストップだルーン。すみませんねお兄さん、冒険者ギルド……いや、宿を知りませんか? できれば安い方がいいんですが」
このままだと両親自慢になりそうだったから、キーが止めに入って本題を話す。ナイス、キー。
「宿かい? それならここの道をまっすぐずーっと進んだら大通りに出る。出たら右側に冒険者ギルドがあるから、そっちに曲がってその隣に宿がある。今は結構な人数が未開地域の探索に出払ってるから今から行っても空いてるはずだよ。案内しようか?」
「いいんですか?」
「あんまり生まれを悪く言いたくはないが、此処は来るものを拒まない都市だ。だから治安が良くなくてな、子供だけ……それも人間連れとか珍しく思った奴が何してくるかわからない」
そう聞くと少し怖く感じる。第五都市で人間は受け入れられなかったが、此処でも人間は物珍しいものらしい。別にそれだけならいいのだが、物珍しさのあまり悪い意味で手を出されるかもしれないというのは多少の恐怖を感じないわけでもない。それに、此処は自分だけでなく皆危ないのなら、尚更気をつけねばならない。特にキーなんかは、貴族の嫡男のようだし攫われて身代金要求とか有り得るかもしれない。
「じゃあ、お願いします」
「あぁ、任せてくれたまえ!」
こうして、自分達は宿への案内人を得た。
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