第3話 今度は俺の腹が鳴った。

 ぐぅううう~。


(あぁ……腹減った……)


 本当なら、放課後に近くのスーパーに寄っていたんだけどな……。


 ぐぅううう~。


(おっと、また腹の虫が……。あとでスーパーに買い物にでも行くとしよう)


 冷蔵庫の中、空っぽだし。


 と心の中で呟きながら、部屋の中を興味津々な顔で見て回っている天使さんに目を向けた。


「へぇ~。これが、人間が暮らしている部屋なんですねっ! 勉強になるなぁ~♪」


 俺なんかの部屋のどこに、ウキウキ要素があるのやら。


 ちなみに、名前は無難に『天使さん』と呼ぶことにした。


 名前がないんじゃ、しょうがない。


 エンジェルさんと呼ぶには……本人の前では口が裂けても言えないが、なんというか……大人過ぎるというか……。


 オブラートに包めない語彙力の無さ。


 はぁ……。


 というか天使さんって、一体いくつなんだ?


 そもそも、天使に年齢って概念があるのか?


「うーん……天使に年齢ってあるんですか?」


 どうしても気になったから本人に尋ねると、


「ありますよ? よく知っていましたね?」


 あったんだ……。そりゃそうだよな……天使と言っても神じゃないんだから……。


 一方、天使さんはというと、


(これも一人前の天使になるため! 頑張らないと……)


 天使さんの目に止まったのは、壁にかけられている学校の制服だった。


梨久りくくんは、学生さんなんだよね?」

「そうですけど。それが?」

「学校休むことになってごめんね」

「? そんなことでわざわざ謝らないでください。休む口実ができて、こっちとしては助かっているんですから」

「え、口実? 梨久りくくん、もしかして、学校に行きたくなかったの?」


 ――ギクっ。


「まぁ……そういう日もあるじゃないですか?」

「う〜ん、どうだろう〜? 私、勉強好きだから、毎日でも行きたいけどな〜♪」

「……天界にも、学校ってあるんですね」

「もちろんっ! 一流の天使になるために、たくさんの天使が集まってくるから。まぁ、私はまだ下の方のクラスだけど」

「へぇー」

「……梨久りくくんは、学校が嫌いなの?」


 ――…嫌なところを突いてくるな、この天使さんは……。


「……あの、これからスーパーってところに行くんですけど、一緒に行きませんか?」

「!! イクっ、イクイクっ!」


 ……イヤらしく聞こえたのは、気のせいだろうか。

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