第12話 ミレーネアはもう遅い

 2人のステータスが目標値に到達した。




名前:フォナ・デインブルグ・ラッケンジー


職業:無職


LV:1


体力:105←注目


腕力:1260


防御:12


知力:120←注目


速さ:15


ゼイ:♡♡♡♡♡♡♡




名前:サラノア・アージュ


職業:無職


LV:1


体力:100←注目


腕力:130←注目


防御:15


知力:2550


速さ:12


ゼイ:♡♡♡♡♡♡




 これでようやく、職業資格の試験が受けれるな。


 フォナは魔法使い、サラノアは剣士を希望している。

 職業を取得すれば、晴れてD級冒険者に登録ができる。

 

「じゃあ、明日にでも王都に行って試験を受けようか」


「ええ!」

「はい!」


 じゃあ、今晩は縁起を担いで豚カツだな。


 などと考えていると、修行屋敷に馬車が止まった。

 中から降りて来たのはミレーネアだった。


「ゼイ。元気にしていたかしら?」


 どういうつもりだ?

 今更、話すことなどないがな。


「何か用か? 俺は晩飯の支度があるのだが?」


「あーーら。冷たいのね。立派な屋敷じゃない。中に入れて下さらないの?」


「だから、なぜ来たんだと聞いている」


「立ち話もなんでしょ? 中でゆっくり話しましょうよ」


 やれやれ。

 ゆっくり話す内容なんてないがな。


 仕方がないので客室へと案内する。

 ミレネーアと執事を対面にして俺たち3人はソファ椅子に座る。

 フォナとサラノアは対面に座る彼女を睨みつけていた。

 

 安心してくれよ。

 彼女に何を言われようが、俺たちには関係ないのだからな。


「で。なんの話だ?」


「ふふふ」


「……要件を言え」


「元気そうでなによりだわ。最後に見た時は死にそうな顔をしてましたものね。プププ」


 お陰様で3日間は何も手に付かなたったがな。


「それで? 嫌味を言いに来たのか?」


「あなたにとって最高の話を持って来ましたわ」


「最高の話?」


「そうですわ。きっと大喜びします!」


 喜ぶといったら……そうだな。

 今すぐにでもこいつがいなくなって美味い豚カツの準備ができればいうことはないな。


「ふふふ」


「……早く言え」


「んもう。せっかちなのね。いた頃と何も変わってないじゃない」


 と、嬉しそうに言う。

 しかも、フォナとサラノアにアピールするように語調を強めて、


「ゼイったら、何も変わらない。昔となぁああんにも変わらないわぁあ! 付き合っていた頃からせっかちでしたわぁああ!」


「……おい。俺はお前と無駄話をする気はないんだぞ」


「おほほほ。そんな顔をしないでよ。本当に素敵な提案を持って来たんだから」


「そんな提案は世界が滅んでも生まれないと思うがな」


「ふふふ。……時にあなた。良い人はできましたの?」


「なんの話だ?」


「恋人ですわよ。こ い び と♡」


 この言葉に、俺よりもフォナとサラノアが反応していた。

 教え子とは先生の恋バナに興味があるものなのかもしれんな。

 しかしな、俺にはそんな浮いた話はないんだ。

 おそらく未来永劫ないだろう。

 ミレーネアに振られた瞬間から、俺のボッチは確定している。

 今後もそれは変わることはないんだ。

 彼女はそれを知っている。

 俺に女っ気がないことを。

 知っているからこそ、こんなことを言うんだ。


「俺を笑いに来たのか?」


「ふふふ。違いますわよ。助けに来たのよ」


 助けるだと?


「どういう意味だ?」


「ふふふ。あなたのことだから、どうせ1人で寂しくしているのでしょう?」


「放っておいてくれ。お前とは関係のないことだ」


「そうはいきませんわ。あなたとは婚約していた仲ですもの」


「今はそうじゃないだろう」


「ふふふ。驚きますわよ?」


 一体なんなんだ?






「あなたと……。よりを戻してあげても良くってよ」





 この言葉に場が凍る。


「はぁ?」


 何を言ってるんだお前は?

 と、言おうとした時である。


「何を言ってるんですかぁああああ!! そんなのダメに決まってますぅうう!!」

「そうよ! そ、そんなのはダメだ!!」


 なぜお前たちが答えを出すんだ?


「ほほほ! 小娘が何を言い出すかと思えば。あははは! ウケますわ!!」


「小娘じゃありません! 私はサラノア・アージュ! ゼイ様の教え子です!!」

「同じく、フォナ・デインブルグ・ラッケンジーよ!」


「ふん! ガキは黙ってなさいな」


「ガ、ガキじゃありません!!」

「そうよ! ガキじゃないわよ!」


「あははは! もう必死ね。優雅さの欠片もないわ。まるでメス猿とメス猫ね。滑稽ですわ!」


「メ、メス猿ですってぇえ!! ウキィーー!!」

「ぬぬぬぬぅ!! キシャァアッ!」


「あはは! その様子じゃ、ゼイを取られたくないようね?」


「そ、それは……。ゼ、ゼイ様は私たちの教育係なのでぇ……」

あたしはゼイ君とは友達だからね。あなたのような性悪女が彼女になるなんて許せないわ」


「アハハ! 許せないですって? どうしてわたくしがあなたみたいなメス猫に許可を貰わないといけないのかしら? 不愉快だわ」


 ミレーネアは手を払う。


「ゼイ。この子たちは不愉快だわ。部屋から追い出して頂戴」


 やれやれ。

 今度は何を言うかと思えば。


わたくしたちの復縁の話は2人きりでしましょうよ。ウフフ♡」


 はぁ〜〜。

 ため息しか出てこないな。


「お前。本気で俺と復縁したいのか?」


「フフフ。そんなこと……。わたくしに言わせますの? あなたの希望を口にしたまでじゃない」


「俺の希望?」


「そうよ。あなたの願望よ。素直にならなくちゃ」


 ふむ。


「確かにそうだな。素直になろう」


 俺の言葉にフォナとサラノアは不安げな表情を浮かべる。


 まずは安心させてあげなればな。


「2人にはこの部屋に居てもらう。俺の大切な教え子だからな。それが俺の願望だ」


「……ははぁーーん。わかったわ。あなたの考えが♡」


 どうわかったのだろう?


「フフフ。あなたもいけずな男になったわね。要するに見せつけたいのでしょう? わたくしとあなたの関係をね♡」


 そう言って立ち上がる。

 そして、俺の方へと近付いて来た。


 ふむ。

 やはりこの女にはハッキリ言ってやらんとわからんようだ。


「止まれ」


「あら? わたくしがあなたの側にいってはいけませんの? これから見せつけるのでしょう?」


「そんなことするはずがないだろう」


 そう言って、俺は立ち上がった。


「あら? 熱い抱擁かしら」


 と、両手を広げる。


「そんなモノは必要ない」


「え?」


「お前の体に触れるなんて2度とごめんだ」


「な、何を言ってますの!?」


「わからないのか? 復縁を丁重にお断りしているんだよ!」


「なんですってぇーーーーッ!」


 ミレーネアはワナワナと震えた。


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